虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
非休人
くっ殺さんは休人ではない。
それでも騎士団長になるだけの実力を宿している……『超越者』ではないが、それに準じた力を有していることはたしかだ。
くっ殺さんと例の女騎士──奴隷騎士に連れられ、ようやく目的地へ辿り着く。
「アナタ~!」
「ルリー!」
教祖の私室──つまりルリの部屋。
ルリの力によって、天井裏やそれ以外のどこかで誰かが隠れていることのない個室。
少し前に訊いた話だと、本来はもっと大きな場所だったらしいが……交渉したようだ。
俺とルリはノリに乗って互いに叫び、力強く抱きしめる……故意ではない死亡によって一度死に、経験値をプレゼントできるので俺としてもプラスである。
「あら、レベルが上がったわ……そういえばアナタ、たしか──」
「せっかくだから言わない方がいい。その方がみんなのためになるぞ」
「……そうね。それに、あまり他の人に教えたくないわ。狙って行われる、なんてことは避けたいわ」
過失で行えば罪も軽いが、故意にやれば立派な罪になってしまう。
だからこそ、道先でどれだけ死のうと犯罪者が増えていないのだが……それをやるなら俺側で処理をする必要があるんだよ。
「──では、二人っきりの時間をお楽しみください」
「……ください」
「ありがとうね、二人とも」
「感謝します」
互いにそう告げて、解散する。
くっ殺さんと奴隷騎士が部屋から出ると、口調を元に戻して家に居るような振る舞いを取り始めた。
「ルーリー!」
「ごめんなさ~い。でも、アナタのカッコいいところが見たかったんですもの。バッチリ撮影しておきましたから、あとでショウとマイにも見せてあげましょう──お父さんの活躍しているところを」
「…………いやいや、さすが騙されないからな! ルリ、あのな……ルリの騎士団にはこの世界の人たちも居るんだ、あんまり殺すようなことをさせないでくれよ」
「分かっているわよ。ただ、あの子たちにも覚悟があるの。それだけは、私にもアナタにも決して侵しがたい部分よ」
そこには同意なのでコクリと頷く。
無駄死にや犬死などはルリが決して許さない、それは分かっているので構わない。
ただ、死を強要しているのと同意な指示を出すのはどうかと思うんだよな。
「そもそもアナタを本気で倒そうとして、どうにかできるのかしら? そんな光景、まったく浮かんでこないのだけれど……」
「結構あるぞ。さっきだって一回死んだ──普段は結界で身を包んでいるけど、それだって魔力を引き剥がしてしまえば外部からあっさりと攻撃されるようになるし……」
「ふふっ、それもカバーする方法を用意しているんでしょ?」
「当然だよ」
現実世界よりも時間の流れが速い世界。
ならばゆっくりと語らおう……夜が明ける瞬間まで。
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