虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
緊急納品 中篇
場所を変えて応接室。
ギルドマスターを呼びだそうとするので、それは断って受付嬢に説明してもらう。
いちいちお偉いさんを引っ張り出すほど、俺は偉くもないからな。
「──迷宮の氾濫ですか?」
「はい。『悪鬼の巣』と呼ばれる迷宮なのですが、予兆に無い氾濫が発生しました。その対処に現在、冒険ギルドと傭兵ギルドが追われているのですが……その、予想よりも苦戦しており、回復薬が足りないのです」
「悪鬼の巣、ですか」
《了解しました。すぐにドローンを数体派遣いたします》
俺の言葉に『SEBAS』が応え、先にドローンを送ってくれた。
俺がここですぐに納品しても、間に合わないだろうし……予めポーションを散布できる機種を派遣しておく。
「そこでツクル様にいくつか回復薬を納品していただきたいのです。貴方様の腕は、すでにすべての生産ギルドに伝わっております」
「そうなのですか?」
「もちろんです! 高品質のポーションを常に一定数揃えるその腕! 休人の中でもしっかりとした情報を基に技術を提供してくれる方はそう多くありません!」
「そ、そうなのですか……」
なんだか熱論してくれるが、そこまで凄いヤツじゃないんだよな。
高品質を一定量出せることが凄いのなら、凄いのは俺ではなくそういうことができる技術そのものが凄いということになる。
「はい! ……す、すみません。こ、今回納品して頂きたい品はこちらです!」
渡された紙のリストを受け取り、一つひとつ確認していく。
大抵の物は暇潰しに作成したことがあり、『SEBAS』に頼めば生産工場ですぐに用意できる物ばかりだ。
だが、それでも気になる物があった。
「あの、『再生の縫帯』とはいったい」
「ああ、それは事故で体の一部が失われてしまった方用のアイテムです。残っていればそこに巻くことですぐに治りますし、そうでなくとも全体に巻けば時間を掛けて失われた部位を取り戻すことができます」
「それは凄い……あの、まだ私はこれを作ったことがないのですが、ぜひ皆さまのお役に立ちたいので挑戦したいです。どうやったら作れるかのレシピはありますか?」
もちろんです、とすぐに必要なモノが書かれたレシピを持ってきてくれる。
……うん、やっぱりだが魔物の素材が必要になるみたいだ。
「できればこれを生産ギルド側で用意して頂きたいです。残りはこちらで用意します、願いできますか?」
「えっ、これだけでいいのですか? ギルド側としては、これらすべての負担を行う気でいたのですが」
「はい。ただその分、これを多めに用意していただきたいのです。あとはこちらで準備しますので」
魔物の素材以外は、すべて:DIY:の力で生みだすことができる。
だからこそ、貰える限り根こそぎ貰っておくのが筋ってものだ。
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