虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

ギルドの情報



 都市の中にはあっさり入れた。
 やはり、生産ギルドの特級会員という地位はそれなりに使えるみたいだ。

 物語の定番で言えば、Sランク冒険者と同じくらいのレベルで扱われるらしい。
 ヘコヘコと頭を下げられ、その理由を尋ねたら教えてくれた。

《旦那様……》

「分かっているさ。連絡されたんだろう?」

 その気になれば妨害できただろうが、そうしてしまうとより疑いが深まってしまう。
 ギルド長による情報隠蔽はほぼ完璧だし、『超越者』経由の情報網以外で俺のことがバレているということはない。

 ──そっちがバレても、蘇生薬に関する情報は洩れていないだろうし。

「レーダーに反応は?」

《ございません》

「なら、とりあえず気にしないでおこう。定期的に確認しておいてくれ」

《畏まりました》

 常時展開となると、魔力の消費が多いからそれは控えておく。
 数時間に一回ぐらいの確認をしておけば、とりあえず逃げる余裕は確保できるだろう。

 ──まあ、ゲリラ的に『超越者』に遭遇したことなんて滅多にないけどさ。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 街の中をふらりと歩いていく。
 視線に殺されることもなく、今のところは侵入時以外でまだ死んでいない。

「どうやら誰も追って来てないようだな」

 認識偽装や光学迷彩による隠形が効いているのか、連絡されてから何か絡まれるというイベントは起きていない。

「まあ、連絡の内容までは傍受できなかったわけだし……あくまでお偉い様が現れたと密告されただけかもしれない。いずれにせよ、警戒はしておくけど」

 世の中に絶対は存在しないわけで……。
 突如蘇生薬の情報が洩れ、それを巡って戦争が勃発する可能性もゼロじゃないのだ。

 故に気だけは常に引き締めておき、過失がないようにしなければならない。

《今後はどうなされますか?》

「せっかくの都市だし、迷宮の情報が少し知りたいな。こういうのはやっぱり、生産ギルドより冒険ギルドの方がいいのか?」

《たしかに、最新の迷宮に関する情報は冒険ギルドにもっとも早く届きます。しかしそれ以外ならば、どのギルドにもある程度同じ速度で伝達されるかと》

 まあ、ある程度情報の共有シェアをしないといけないだろうし……専門分野だけは少しだけ遅く伝えるぐらい、人として当然だろう。

「となると、生産ギルドで訊くのがいいか。いや、でもここからでも暗躍都市に行くことはできるのか? なら、情報ギルドに……面倒臭くなりそうだな」

 あらゆる情報が手に入る場所だが、いろいろと荒らしてしまったからな。
 ……うん、そのうち詫びの品でも持って挨拶しに行こうか。

 ──そして、結局生産ギルドへ向かった。


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