虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

レベル限界 後篇



「けど、レベルか……」

 どうにかして『騎士王』を追い払うことに成功したものの、先ほどまでの話はしっかりと頭に残っている。

「レベルが一度250で止まり、999でもう一度止まる。なら、そのあとは?」

《……申し訳ありません》

「神話とか伝説とか伝承にも無いんだな?」

《先ほど知った初代『騎士王』のみです。これまで収集したデータの中に、そういった情報は存在しません》

 万能にして全能の権能を持つ『騎士王』。
 代々その力を王に移譲してきた……つまりは、継承しきれない部分があったかもしれないということだ。

 先祖返りという言葉がある。
 まあ、普通は突然親に無い身体的特徴が出ることを言ったりするんだが……この世界の場合なら、突然特殊な能力に目覚めるとかそういうパターンだな。

 けど、それって結局先祖の力があるからこそ、発現するわけだ。
 過去と今が交わり、より云々……みたいな話はあるが、結局引き継ぐだけなのであれば薄められた力がそれを超えることはない。

「──ってことなんじゃないか? かつては限界すらも超えることが可能だった権能が、時を経て劣化しているという仮説」

《『超越者』の能力継承について詳細を知らなければ判明しない点もございますが、概ね旦那様のご考え通りかと》

「……いや、適当に言っただけだから俺も分からない。というか、継承が適正に関係なくできるのか、適性によって発現率が異なるのかどうかを知る必要があるな。継承条件があるのは、前に『錬金王』に訊いたし」

 先代の『錬金王』にしてロリボディを持つ彼女は、弟子である人造人間ホムンクルスに己の権能を継承させた。
 その際、いくつかアイテムの錬金をさせていたらしいので……それが条件なのだろう。

「となると、当然『生者』についても気になるわけだが……俺の場合は死神様だから授けられたものだし、継承方法も死神様に訊くしかないんだよな?」

《おそらくはそうなるかと。旦那様の状況が私には分かりませんでしたので、本当に仮説ではありますが》

「気にする必要はないさ。せっかくの機会だし、詳しく調べてみることにしよう」

 分からないことが多いのは、『生者』にしても『超越者』そのものに関してもだ。
 だが、そのすべてを知ろうとするならば、相当に面倒臭いイベントの数々に絡まれる気しかしない。

 身の丈に合う程度で情報を集める。
 今の俺に安寧の時をもたらすためには、そういった選択をするしかないのだ。

 ──特に、家族へ影響がいかないように。


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