虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

歓迎ミニゲーム その14



 少年は荒れた、そりゃあもうかなり。
 だが、俺たちには心強い味方がいる──そう、偉大なるゲームマスターGM様が!

 明らかに敵意満々で銃を向けてくる少年、それを運営が執り行う会場でやればどうなるかなんて……火を見るより明らかだろう。

《旦那様、取り急ぎご報告しなければならないことがあります》

「どうした、急に?」

《先ほど少年を捕縛しに来た存在。あれらのエネルギー反応と『白氷』の城に残っていた残滓が一致しました》

(マジで!?)

 驚く声を抑え、代わりに脳内で叫ぶ。
 つい先日訪れた大陸の極北に眠る『白氷』という『超越者』。

 妖精種の少女、彼女はなんらかの理由で眠りに着いていたのだが……。

「つまり、捕縛か抹殺から逃げたのか」

《仮説ですが、運営にとって不利益になる事態を防ぎたかったのでしょう》

「運営としても、解放はプレイヤーである休人にやらせたいんだろうな。だからそれを邪魔できる『超越者』……というか、本当にそれをやった『白氷』を狙ったのか」

《それも可能性の一つかと》

 運営との交渉、それは選択肢にない。
 その気になれば万病に効く薬を使えば治せるし、あくまで中に居る『白氷』に影響が及ばない方法以外を取ろうとしているから解放できていないだけだし。

「……とりあえず、運営に俺ができることはそう多くはない。何かあったらルリに言うのが一番だろう」

《奥様にですか?》

「MMO業界において、ルリの名を知らない奴はモグリか情弱だ。何せプレイすれば勝手にバグを見つけだしてくれるし、バグだと思えなかった部分まで暴いてくれるんだぞ」

《……なるほど、そういうことでしたか》

 自分に不利益なことなどほぼ・・起きない。
 バグによるプレイの阻害なんて、それこそ不可能と言っても過言じゃないだろう。

「けど、今はその段階じゃない。というか、これは取るべき選択肢の中で運営相手に現実で裁判を起こすよりもやっちゃいけない選択だからな」

《承知しております。旦那様のご家族にご迷惑が掛からないようにします》

 こればかりは『SEBAS』であろうと厳命を心がけることだ。

 ルリたちがEHOをエンジョイするためのサポートをしたい俺としては、面倒事に巻き込みたくないからな。

「──まあ、それはさておき次で最後のミニゲームだな」

《旦那様が自らのお力で一つクリア成されておりますので、残りは一つです》

「よし、はりきっていこうか」

 これが終われば、ようやく腕輪を手に入れることができる。
 そうワクワクしながら俺たちは、最後の会場へと向かうのだった。


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