虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

歓迎ミニゲーム その01



 イベント世界

 その日、イベントが始まりと共に休人たちは異なる世界へと移動させられた。

 賑やかに、そして華やかに盛り上がるその街並みは──現れた人々を祝うように喧騒を生みだしている。

「まあ、ある意味では何度も訪れた世界なんだけどさ」

 ずっと前に知ったのだが、『SEBAS』によると──これまで行ったイベントの舞台となった世界はずっと同じなんだとか。

 ただし、惑星としての規模が広いためそれが分からないことに加え、活動範囲を決められているからそれを知ることができない……という仕組みらしい。

 これが何を意味するのかと言えば、イベントごとに箱庭に飛ばされているという認識でいいんだとか。

 最初のイベントは普人族と妖精族が過ごす箱庭へ、次は古代技術が存在する箱庭へ。

「そして今回は、ミニゲームらしい祭りが行われている箱庭へ……って感じか」

 MMOで例えるなら──イベント限定サーバーといったところだろう。
 普段のサーバーとは別の場所に存在しており、平時は行けないようになっている。

「どうしう仕組みなんだ? そういう祝いがあるという仮定で構成された世界なのか?」

《祭りを引き起こすよう、運営側で操作を行えば容易いことかと》

「直接乗り込む、あるいはそういう発想に至るようなイベントを用意しておくってところか。いずれにせよ、簡単にはできないな」

 ただのゲームではないので、しっかりとした前提条件を満たしていなければ成立していないだろう。

 AIの方で何かしたのかもしれないが、それでも充分に過程は面倒だったと思われる。

「しかしまあ、そろそろ遊ぶか」

《では、最初は私からの助言は行わないでおきます。どうぞ、ご自由にお楽しみを》

「ああ、気の利いた素晴らしい執事だ」

 俺も一回ぐらいは真面目にやってみる。
 腕輪を一つ手に入れるならば、一度はすべてのミニゲームをやらねばならない。

 二つ目が欲しいならばすべてをクリアしなければならないので、そちらは任せよう。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「……全然だった」

 十個のゲームがあるのだが、俺が俺のままクリアできたのは一つだけだった。

 やはり、能力値で差の付かないミニゲームとはいえ、貧弱すぎるステータスでは対応できないことが多すぎたようだ。

「スキルが使えないとはいえ、まさかあそこまで差が出るとはな。魔道具も使わない、そう自重したせいか」

 能力値の補正がまったくない場合、現実における俺の身体能力が反映される。

 だからある意味、この世界との差異が分かりやすく証明されるのだが……うん、モブと主人公の差ってこんな感じなんだ。


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