虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

白氷調査



 アイプスル

「……意外と難しいな」

 これまで接触した強者の能力は、どれもが超常的なものばかりだ。
 その一つひとつを『SEBAS』が解析することで、どうにか魔道具として再現できないかどうか研究を続けていた。

 現段階では、彼らの扱っている能力を劣化させた技術の再現程度で留まっている。

 いつもお世話になっている『龍王』の結界など、『龍王』が持つ権能の断片程度でしかないのだから仕方のないことだ。

「水分の操作か……魔力を使っていいならそれもできるけど、いっさい使わないでって条件を付けると異常にハードルが上がるな」

《精霊や妖精たちの種族性質ですので。こればかりは断念せざるを得ません》

「仕方ないか……なら、できるだけコストを抑えられるようにしよう。あっ、水分と言えば前にある話を聞いたことがあるんだ──」

《なるほど……アレでございますね。魔法とは別のアプローチとして、とても参考になります。異なるプランとして実行しましょう》

 自衛策として考えていたアイデアに、封印されている『白氷』の権能を用いることで、より安全度が増すと思われる。

 こちらはコストを気にせず、:DIY:を使いまくることを考慮して作成するつもりだ。

「水を操作できれば、汚染物の排除も簡単になりそうだからな。あと、砂漠にも恒久的な水分を得る手段とかもできそうだし」

《そちらは可能です。水脈の操作などは、すでに方法が確立されています》

「マジか……」

《はい、マジです》

 たしかに、未だに完全開放されていない俺の職業【救■者】を使えば、それもできるかもしれない。

 これまで星脈や箱庭に接続した際、機能していたのはこの職業の能力だし。

「しかし、妖精か……『白氷』のことを知っている妖精族が居るかもな」

《確認されますか?》

「そうしようか」

 解析を『SEBAS』に任せている間、正直俺が必要なことなど何もない。

 あくまで俺は:DIY:の媒介として、用意された設計図通りに求められたアイテムを作るための道具となる……言ってて虚しいな。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「『白氷』かい? もちろん知っているよ」

「本当ですか?」

 エルフの隠れ里を訪れ、里長(兄)に訊ねてみた──あっさりと教えてくれたな。

「彼女は好奇心が旺盛な娘でね。どこにでもふらふらと行く娘だったよ。だから、最近はその様子が分からなくて心配だったけど……どうやら君が見つけてくれたようだね」

「ええ、まあ……どうやら神の裁きを受けてしまったようで」

「そうなのかい? まあ、前にも似たようなことがあったし、十年もすれば勝手に起きるだろう」

 エルフの感覚は普人よりも長い。
 十年と言われて、そう簡単に納得できない俺が居る。

 しかし前にもやっていたのか……調べた限り、疲労困憊という感じだったし、もしかしたら安心しているだけじゃダメかもな。


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