虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
理外の存在
ここで主人公のような者たちならば、どうにか解除方法を探すだろう。
まあ、それをやること自体に異論は持たないし、たぶんそれも可能だ。
大量にストックを持っている、万能回復薬の一つ『エリクサー』。
それを抽出して高濃度に圧縮した薬品でも作って触媒にすれば、だいたいの呪いや状態異常などの現象は解除することができる。
だが、俺は正義の味方ではない──あくまで妻や娘や息子たちに、恥じない行動を心掛けているだけだ。
最終的にその目的を達成することさえできれば、その過程はどうでもいいだろう。
「妖精のサンプルデータはまだ少なかったからな。こういう機会でもないと、データがその分だけで偏っちゃうし」
《──『白氷』の種族は【雪妖精】、職業は【吹雪姫】のようです》
「まあ、本当に特化しているな。弱点属性でやったら倒せそうだな」
ただ、そうゲームの相性合わせのように上手くはいかないんだろうな。
火すら掻き消す絶対零度や電気を通さない純水など、水という概念はさまざまなことに通じているわけだし。
水ではなく雪や氷だが、すでに水も操れることを『SEBAS』が解明している。
俺もその恩恵にあやかる身だ、解析させてもらった情報はありがたく使わせてもらう。
氷柱の中で眠る少女は、己の力を用いて仮死のような状態になっているらしい。
時間が経てば自動的に解除され、勝手に目が覚めるとのことなので、すぐに起こすという選択肢が失われたわけだ。
「けど、そんな緊急手段みたいなことをしなきゃならない状況ってあるんだな……」
《『超越者』同士の争い、強者による干渉なども案に入っておりますが……おそらくは、超常的存在によるものの仕業かと》
「神とか運営とかか?」
《左様にございます。『超越者』が理より外れし者たちとはいえ、すべてにおいて概念を無視しているわけではございません。あくまで自身の権能が及び範囲に限定されているため、それ以外のことでは普通と同じです》
「眠っているって、こういうことかよ……」
例外である『騎士王』と【魔王】を除けばそうだろう。
万能の権能を持つ者と万能に成り得る器を秘めた者だ、彼らは理外の存在といっても過言ではないのだ。
「……起こす起こさないにせよ、ここにも監視が入っているのか?」
《私の手で結界を構築しておきましたが、それが効果を成しているかどうか……早めのご決断が必要かと》
「そうだな……どうしようか」
なんでもかんでも、俺が解決できるなんて考えちゃいない。
守るべき家族が、星の民がいるのだ……慎重に選ばなければ。
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