虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

東国巡り その06



 光の速度で進むのだから、異常な時間で目的地に到着することができる。
 風が加速を邪魔しようとするが、光の力はそれを強引に振り払って進んでいく。

 その秘密は結界であり、風を撥ね退けたうえで魔力でコーティングし、光の粒子を周囲から集めて機関に送り込む。

 本当、『龍王』さんには何から何までお世話になっているよ。

「いやー、しかし平和だなー」

 魔物はこの倭島にも存在した。
 都の辺りは速攻でキルされているが……魔物は辺境であればごく僅かにだが出てくる。

「ただ、そこまで強くないからなー」

 式神というシステムが主流となっているこの島で、わざわざ強力な魔物を逃す手立てはないだろう。

 式神は妖怪でなくとも、なることがいちおうは可能なのだ。

「式神は荒ぶる神であり、魑魅魍魎であり、妖怪変化。神が生みだした魔物を、その中に含まないはずがないんだよ」

 そんなこんなで、強い魔物であれば誰かが狩って式神として従える。

 これまでの大陸でそういったことができる存在──『召喚士』や『調教士』がそこまでやらないのは、術式システムの違いだからだ。

「まあ、それが主流だったのも関西域だけだろう。西か東へ進めば進むほど、別のヤツが統べる場所に近づいていく。そうなれば、また別のルールがそこを支配する」

 ルート的に、安全ではあるが人が居ない場所を選んでの移動中。
 魔物は居るがすべて蹴散らし、そろそろ目的地に着きそうだ。

「さて、次はどんな場所だろうか?」

 町並みが少々のどかなものになっていく。
 平安や室町基準での村っぽいが、なんだか人々が揉めているように見えた。

「『SEBAS』、望遠してくれ」

《畏まりました──画像処理完了、ドローンより映像を網膜に投影します》

 眼の半分だけが切り替わり、その先で何が起きているのかを見せてくれる。
 そこでは少しマシな服を着た男が、刀をチラつかせて村人を脅していた。

「字幕は……ああ、そういうことか。すぐに支度を、さすがにこっちの人にこの原付きで接触するのはどうかと思うし」

《畏まりました。結界のモードを変更、肉体の骨子となって移動を補助します》

「こういうときに必要なもの、だからな……【獣王】かな? 一気に飛ぶぞ」

 かつての動きを思いだし、原付から飛びだすと空を蹴って移動する。
 ……なお、原付は『SEBAS』によって回収されました。

「いちおうファンタジーなゲームだし、この方が違和感が無いって……いろいろとツッコみたいけどな」

 さて、移動中も状況は確認しておこう。


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