虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

東国巡り その05



 それからというもの、原付きに乗ってさまざまな場所を巡っていく。
 時々生産ギルドとの契約がある日は帰ったのだが、それ以外の日は倭島に居た。

「何より、マッピングが楽しい」

 普通に[マップ]機能を使えばある程度地図が確認できるのだが、自分で向かった場所はあとで詳細を確認できるようになるのだ。

 そして、ある程度地域をコンプリートした場合……その地の座標やら人々の生活区域に関する情報が手に入る。

「スキルがあれば、これも簡単にできるらしいが……(鑑定)しか無いからな」

 あくまで本人が習得したスキルのみ。
 外部から──称号や装備品などで一時的に使用可能にしたスキルでは、そういったオプション機能の簡易版は行使できない。

 そうじゃなければ、俺だっていろいろと便利機能の恩恵にあやかれたんだが……世の中そんなに甘くないってことだ。

「しかし、まあこれで関西は終わったな」

 おそらく一番難易度の高い京都付近は、そこの親玉が招いてくれたおかげで予めコンプリートできていた。

 あとはそこから円を描くようにグルグルと周っていっただけ……本当、面倒な所にまた行かなくてよかったよ。

「さて、次はどっちに行くかだな……西か東かどっちにしよう」

 どちらであろうと、俺は構わない。
 特に重要視するイベントがあるわけでもないし、コメはこの旅の最後というのもなかなか好いものだろう。

「となれば、先に四国・九州巡りかな? 地形に多少の違いはあるけど、取り寄せた日本地図があればとりあえず旅はできる」

 すでに『SEBAS』の働きによって、過去の日本との差異を確認している。
 どこかのMMOゲームのように荒廃した二本を再現したわけではないので、道路などが整備されているわけではない。

 しかし、道路でなくとも道はあるわけで。
 街道や山道などはある程度整えられているため、そちらを通れば安全に旅ができる。

「──あばよ、『陰陽師』。次に会うならお土産もよろしくな」

 俺を捕捉する式神に向けてそう告げ、魔力全開で動かした原付きで移動を始めた。

 あくまで『陰陽師』が支配するのは関西域だけ、そこ以降はナニカの縛りがあるように外へは向かわないので安心である。

 もちろん、そのまま移動しても先ほどまでどちらに行こうか悩んでいた身だ。
 即座に追跡でも出され、すぐに呪いの一つや二つ放たれるだろう。

「──原付きオプション01『光速機関』」

 その瞬間、物凄い勢いで原付きが進む。
 後部のフランジが眩い光を放ち、粒子を噴きだして加速していく。

 この技術は『機械皇』の所にあったモノ。
 また、『光線銃』や俺の『光粒銃』もこの技術から発展して生みだされた。

 それを魔改造して強化し、勢いよく噴出するようにしたのがこの装置なのだ。


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