虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

光線銃 後篇


 始まりの町 生産ギルド

「──これが完成品なんだね」

「ええ、いくつもセーフティーでロックしてありますので、誤射などは無いでしょう」

 完成した光線銃──銃口に球体がくっついている銃を、ギルド長に見せていた。
 普通の銃との違いを明確にするため、また技術に特別なナニカが使われていることを証明するための形状だ。

「どういう仕組みで光線を放つんだい?」

「企業秘密ですよ」

「おっと、うっかりだったね」

「暴こうとすれば爆発したうえ、嫌がらせ機能が発動しますのでお気をつけて」

 そう言った途端、ギルド長の目が怯えを見せるのだが……どうしてだろうか?

「君が仕込んだ嫌がらせ、か……もしかして死ぬのかな?」

「さすがにそこまでは。ただ、人によってはそう思えてしまうほどの嫌がらせかと」

「やれやれ。君はそうやって、いつもぼくの仕事を増やすんだ。完全秘匿は少し不味い、何かヒントはあるかな?」

「ああ、それは大丈夫ですよ──ここに、参考書を作っておきました。これを使えば、少しは解析のヒントになるかもしれません」

 監修『SEBAS』による、魔力を使わない光線の放ち方が分かる参考書である。
 予め、これを生産ギルドに提供しておくことに意味があるらしい。

「……いいのかい? ここまでのものを公開するなら、もっと別の方法を取った方が儲かるだろう?」

「ええ、それは分かっています。しかし、お金では買えないモノもありますので」

「好い言葉だね、ぜひあの強欲商人たちに聞かせてやりたいよ」

「止めておきましょう。打算でしか動けない私のような人間は、心に傷を負ってしまう」

 家族のため、という理由で動いている俺にはそれが該当した。
 金で買えないものはお父さんとしての尊厳であり、打算とはそれを維持するための努力という名の悪足掻きである。

「あははっ、それは悪いことをしてしまったね。とりあえず、これは大切に預からせてもらおう。情報は公開するとして、君に関する情報はどうするんだい?」

「そちらはもちろん、いつものように秘匿の方向でお願いします」

「うん、分かっていたよ。君のことはぼくがしっかりと守るから任せておいてよ」

「ギルド長直々にそのような言葉を送っていただけるとは……感激の極みです」

 よしてくれよ、とギルド長は言うが割と本気で思っていることだ。
 ここまで信頼できる人物でなかったなら、俺の活動はそう上手くはいってなっただろうからな。

 ──その恩返しのためにも、このギルドを支えていこうじゃないか。


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