虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

青田買い 後篇

 チュートリアルをやっているからか、戦闘にもそこまで抵抗感は感じられなかった。
 というか、初戦闘に勝利している分俺よりも数段マシだと思える。

「お見事です、お二人さん。……おや、どうされましたか?」

「や、やっぱり……その、チュートリアルよりも魔物がすぐに倒せてしまって……」

「……ワタシなんか、攻撃を受けてもいっさいHPが減ってないのよ」

「ここはまだ、初心者のお試しフィールドと言える場所ですので。いくら装備の力が貴方たちの身を守ってくれると言っても、決して完璧ではありませんよ」

 大きすぎる力は身を滅ぼす。
 そうして何度も死と再生を繰り返している俺だからこそ、なんだか真実味のある言葉が発せている。

「アイさん。その杖は魔法の触媒としての効果はもちろん高いですが、非常に硬いのでそのまま武器としても使えます。魔力が切れても戦えるように、しっかりと振るえるようにした良いでしょう」

「は、はい。棒術スキルがあります」

「スキルもそうですが、スキルが無い時でもしっかり使えた方が良いかもしれません。この世界にはなんでも、スキルを奪うスキルというものもあるみたいですので」

「わ、分かりました」

 条件を満たせば返還されるらしいが、それは裏を返せば満たさなければ帰ってこないということだ。
 物語の主人公ほど性能の高いモノではないらしいので、あまり気にしてはいないけど。

 えっ、【魔王】の能力?
 あれは強者殺しみたいな面もあるうえ、本人が死ねば返還されるので休人たちにとってはそこまで脅威にならないんだよ。

「ミーさん、光粒銃は魔力を消費します。埋め込まれた魔石で多少補っていますが、それでも使用者も魔力を使う必要があります。ですので、乱射はいけませんよ? 形や動きが自在なことを、しっかり活かしてください」

「もちろんよ」

「ですが、ミーさんは先に【見習い銃士】になることが先でしょうね。そして、魔力が切れた時のために普通の銃か弓も持っていた方がいいかもしれません。相手を油断させるには、何ができるかを偽るべきです」

「ありがとうございます」

 俺もまた、そうして取り繕う一人だし。
 直前まで武器をポケットに入れておくことで、何を使うか分からなくしている。
 おまけに攻撃の本命はドローンであり、俺自体が囮とも呼べるだろう。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 始まりの街

 彼女たちを連れて再び中へ転位する。
 浮足立っていた少女たちは、何度か戦闘を経験することで少し顔つきが変わった。

「「改めて、ありがとうございました!」」

「いえいえ、初心者さんにもこうしてEHOの虜になってもらえれば本望ですので」

 何より、君たち二人ならばなおのことね。

「それじゃあ、私はこれで──何か連絡がしたいときは、さっき渡したメモ通りに動けばこちらに伝わります」

 そして、ニコリと笑ってから──

マイのこと、よろしくお願いしますね」

「「はい! ……えっ?」」

 返事を聞いて安心した。
 自害をして、そのまま死に戻りによる転移で俺はこの場を離れる。

 ──娘にバレたら、怒られそうだしな。


コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品