虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
青田買い 中篇
俺もさすがに、初心者に神代魔道具を売ろうとするほど愚かではない。
それをやった場合、彼女たちは狙われるうえに俺の情報を神代魔道具を求める者たちに素直に渡してしまうだろうから。
……そうでなくとも、情報を吐くまで追われてしまう可能性が高い。
そんなことをすれば、それ以上に避けたい事態が起きてしまうので。
「──お二人とも、よくお似合いですよ」
まあ、そういうことなので、なるべく目立たないようにしておきたかったのだ。
あくまで俺が新技術を髄まで使ったものではない、比較的初期に作った装備や迷宮の宝箱から出た物などを並べてみた。
そして彼女たちは現在、勧めてみた装備を身に纏ってステータスを確認している。
「アイさんは魔法使いということですので、魔力の消費が抑えられる装備で纏めました」
新人が派手な装備で往来を歩けば目立ってしまうため、色は少し地味めなモノだ。
さすがに初期から好い装備が手に入れるのは難しいので、彼女たちもそれは仕方が無いと選ぶときに納得してくれた。
「こ、これが普通なんですか? こういう装備って、やっぱり激レアアイテムとかに入る気がするんですけど……」
「おや、お値段の方が心配ですか?」
「それもそうなんですけど……」
モジモジしているアイ。
一方、ミーの方も渡した弓と矢筒をジッと見ていた。
「……これって、試し撃ちできないの?」
「それはさすがに、町中ではできませんね。今すぐに外で試すか購入後に実戦で調べるかですね」
「……外で、試させてちょうだい」
「はい──畏まりました」
娘と同じ年頃の少女たちだからだろう。
少々調子に乗ったお父さんは、指を鳴らすアクションといっしょに転位装置を起動し、彼女たちを町の外へ移動させる。
「「えっ!?」」
「では、さっそく試してみましょう──ですがその前に、こちらの首飾りか指輪を身に付けてください。周りから見られないように、姿が消えるようになります」
「「は、はい……」」
突然のことで思考が硬直しているうちに、隠形系のアイテムで姿を隠させる。
……確認もせずに装備しているが、これが隷属系のアイテムだったらアウトだな。
そういえばまだ、そういうアイテムが存在するって説明をしていなかった……ちゃんとあとで説明しておこう。
「ちなみにですが、帰りも私といっしょに同じ手段で帰るか死に戻りするかを選んでもらいますよ。実は、さすがに初心者がいきなり外から来るのは問題でして……」
二人とも、そろそろ思考が回ってきたのかコクリと頷く。
若干町から離れた人の気配が少ない場所へ転位したので、すぐに誰かに気づかれるということはないだろう。
──さて、実際に使ってみて、気に入ってもらえるといいんだが……。
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