虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

坑道獲得



 ちなみに、俺はまだN11まで辿り着けていない──あくまで寒防都市のあるN10の北部分を解放したにすぎない。
 だがそれだけでも、人々にとっては救いとなったらしい……儲かるんだよ。

 少しでも活動できる範囲が増える、人はそれだけで迅速に行動する。
 早ければ早いほど、空いた場所を自分で埋めることができる……また遅ければ遅いほどそこに手は届かなくなるからな。

「人形にもっと解放してくれって言われてもな……やれやれ、面倒だな」

《目的地到着です》

「ご苦労様」

 寒防都市からやや北西に行った所。
 N10とN11とを隔てる山……いや、壁がそこにはある。
 話によれば、そこから先は寒さが断然に違うんだとか。

「まあ、今の俺には関係ないけど」

 そんな山を抜けるには、二つの方法が存在すると教えてくれた人々は言った。
 一つは愚直に山を登る方法、もう一つは山の中を潜っていく方法。

 明らかに後者が簡単に思えるだろう? しかし、彼らにとって正解は前者である。

「寒さを防いで、戦えれば山を登る方が正しい。より強いのであれば、寒さに耐えずとも洞窟を通ればいい、ね……たしかに依頼は割高だったな」

 俺が所有権を主張したのは、山にあるとある坑道だ。
 そこでは無数の鉱石が発掘可能で……魔物の素材以外の産業としては、かなり高い割合で収入を得ていた。 

「まあ、別に坑道が欲しかったわけじゃないけど……手に入ったものは整理しようか」

 それなりに使われていた採掘場で、だいぶ掘られた跡がある。
 そのため、入り口の辺りは魔道具によって環境が整えられていた。

「電源……じゃなくて、スイッチはここか」

 魔力を少量流し込むと、パッと坑道の中に光が灯っていく。
 灯り自体は奥の方まで用意されており……視界内の壁には、採掘痕が残っていた。

「『SEBAS』、確認を」

《はい。フィールド内に魔物は、存在しないようです。しかし、爆発痕があります……これは『爆裂石』と呼ばれる刺激によって爆発する鉱石が採掘されることで、危険度は高いものとして認識されたのでしょう》

「ちなみに、安全に採れるか?」

《可能です》

 その方法を訊き、すぐにできると判断。
 特にやることも無かったので、準備を整えて実行に移る。

「領土認定、支配実行、【救■者】──部分起動」

 坑道の入り口から、超小型ドローンに運ばせて最奥地に設置した小さなセーブ石。
 それらが囲む領域の中で、俺はつい先日解放された力を解放する。

《リンク完了。星核との接続を締結、以降の支配を遠隔で実行可能です》

 さて、よりよい環境にしようじゃないか。


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