虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
死亡転移
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≪S11が解放されました≫
エリア解放者として名を刻みますか?
〔YES〕/〔NO〕
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「あれ、特典は無いのか」
《あくまで『侵雪』は侵蝕によってその効果範囲を広めたもの。そして、正しくフィールドが解放されたモノではございません。人々が乗り越えられなかった試練、そのツケということでは?》
「……つまり、慈善事業であって報酬があるものじゃないと?」
《その通りかと》
いや、まあ別に好いんだけどさ。
手に入ったアイテムだって、コピーできる限りコピーして解析しているだけだし。
だいたいは魔力を使いすぎたり、目立って使えない物なんだよ。
「ただ、これで解放されたんだな」
《はい。名を刻めば、旦那様は名実共にこの領土の支配者となれるでしょう。管理をこちらにお任せになれば、お手を煩わせることなく維持が可能となります》
「……いや、止めておこう」
改めて悩んだが、それでも〔NO〕をタップして解放を完全なものにする。
空は綺麗に澄み渡り、雪との境界線がより北の空へ向かっていく。
「というか、どの辺りまでが『侵雪』に侵されているんだ?」
《最低でも五区画は封鎖されているかと。ここまでの侵蝕力を持つ力ともなれば、離れていなければすぐに分かりますので》
「なるほど……」
戦闘力を気で探られないように隠していても、目の前で直接戦って調べればすぐに露見するもんな……地球産はかなりの隠蔽能力を持つんだった。
関係ないが、この世界だと魔力と気力を用いてそれらを観測するのが主な強者たちの戦闘力計測法だ。
魔法使いは魔力、武人は気力……そして真の強者はその両方で計る。
俺はいちおう、魔力だけであれば強く見られるのだが……他があまりに非力なので、誤情報を流していると思いこまれるんだよな。
閑話休題
《旦那様、一度撤退することを提案します》
「ん? もう少し行っておかないのか」
《この環境の変化です。何者かが解放したことは明白でしょう、その疑いが旦那様に向かないように一度門を通らずに拠点に引き返すのがよろしいかと》
「門を? ……あっ、そういうことか」
つまりは死に戻りだ。
たしかに死んだと思いこませれば、疑いからも逸れるだろう。
「なら、さっそくそうするか」
《はい。すでに探索隊の準備が整いつつあります……なるべくお早目に》
「了解っと」
いったん『生者』の権能を調整し、その場での即死に戻りを解除する。
その状態で死ねば──転移になるわけだ。
《旦那様。拠点での位置変更は》
「あっ──」
そして、再びの旅路が確定した。
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