虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

神様談(10)



 有ってない、無くてある……人々の目には観測不可能な真っ白な空間。
 子供のような姿をしたものと、老人のような姿をしたもの。

 そして、紅蓮の獅子がそこにはいた。

「ちょっとちょっと! なんで、ツクル君はダメなのにあの子たちはいいのさ!」

「落ち着け、■■■。理由は分かっているはずだろう」

「うぐっ、そうなんだけど……だけどさ!」

 その日、子供は荒れていた。
 原因は、ツクルたちが侵略者を冒険世界から追い返す映像。
 初めの内は良かった、ツクルの活躍で死んだ者すら蘇生する神の御業を起こしていたからである。

 しかし、戦闘に参加してからが拙かった。
 視てしまったのだ──これまで休人と接しておらず、ツクルだけを見ていた■■■たちでは視ることのできない……幾柱もの神々の祝福を複数授かる、大量の休人たちを姿を。

「ひどいじゃないか! 僕は【救星者】の解放を手伝ってくれって言っただけなのに、それを断ってまで加護配り? 似たような作業なんだから、少しぐらい手伝ってよ!」

「……全然違うではないか。それは、お前のような神格者そんざいだけだ」

「オレは試練という過程を経れば簡単だ。だが、普通の神はそうはいかない。それに……ヤツへどうやって関わればいいというのだ」

「うぐぐっ……」

 神は人々の行動を観て、自身の祝福を送るに値するかを調べる。
 剣神であれば剣の腕を、鍛冶神であれば鍛冶の腕を……。

 ツクルの場合、圧倒的な死亡回数と与えられた:DIY:という創造の力があった。
 それにより、創造神■■■と死神という上位の存在から加護を与えられたのだ。

 しかし、それ以外の適性はほとんどと言ってもいいほどに皆無であった。
 試練という厳しい過程を経なければ、獣の神もまた加護を授けることはできなかった。

「精霊神の加護を弾いたのは、どこの馬鹿者であったか……」

「うぐぐぐっ…………。条件を付けるのは間違っていたじゃないか。ツクル君の創造には常に僕が携わっている。それを奪おうとするのであれば、創造神である僕のものを奪うと同義なんだよ」

「気持ちは分からなくもない。だが、事情を知らないアイツがどう思うかは別」

「……そうなんだけどさ」

 神々のツクルの加護に関する話は、長く続いていく。
 それだけツクルのことを気にかけ、与えた種が花開くことを期待しているからだ。

「……どうかご無事で……」

「ちょっと、◆◆◆◆! 悪いんだけど、すぐにアッチにこれを送ってきて!」

「……分かりました」

 そしてまた、一人の女神は■■■によって真っ白な空間を駆けずり回る。


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