虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
裏五天談 その01
再び舞台は生産ギルドの中。
話の分かる表の皆々さまの前ではリーダー面をしたが、父親の威厳というあったとしても無きにしも非ず状態な現状から鑑みて、下手に出ない方がいいということになった。
『まあ、これはこれで待ちぼうけをくらう彼氏彼女の片方みたいになってるけど』
今の俺は、髑髏の紋様を刻んだ椅子に座っているように投影されている。
……現実でそんな椅子が有っても、絶対に座らないんだろうな
『そもそも三人以上集まるんだろうか。表にも帰還時に送れただろうけど、お土産がありますって情報をサプライズにしたからな』
強力な武器などはアウトだし、そもそも渡してある『闘天』たちには必要ない。
無難な品ということで、各種ポーション詰め合わせセットと携帯食料を収めた魔道具を渡しておいた。
『さて、まずは誰からかな?』
ここは無難に『孤天』が来てくれるとありがたいんだが……確率は三分の一、俺は俺を信じる!
──運はルリに任せておくべきだった。
というか、さっき逢った恩恵がちょっとぐらいあってもいいのに、まったくと言っていいほどに効果がない。
それほどまでに、俺自身の運が低いのかもしれないな。
『…………』
『…………』
先ほど確率から抜いていたことから分かっていると思うが、替え玉担当『SEBAS』は俺の要請ですぐに駆けつける。
だからこそ、まだ待機してもらっていた。
故に、今居るのはその二人じゃない。
魔法使い風だった『魔天』とは違う、闇に溶け込みそうな外套を被っている。
歳は十五、六ぐらいだと思うが、初期設定でどうとでもなるので俺では判断に欠けてしまっていた。
ここで『SEBAS』が居れば、重心などの観点から当ててくれただろうけど……先も挙げた通り呼ぶわけにはいかない。
『…………』
『…………』
だからこそ、沈黙は起きていた。
互いに何か話すことがあるわけでもなく、最初に『どうも』と言うだけで終わった。
気まずい、が今の俺にどうにかする手立てもないんだけど。
必要以上に声をかけ、相手の機嫌を損ねたらお仕舞い……裏の五天たちとはそういった存在であることを意識しなければならない。
『な、なかなか、来ませんね……』
『……だね』
挨拶を返してもらったときに分かったのだが、俺の聴力に問題がなければこの『天』は女の子だろう。
つまり、『孤天』と友達になれる可能性を秘めているということだ。
できるなら、そっちの方を頑張ってもらいたいと思うのはいけないだろうか?
──張り切りすぎな父親も、かなり引かれるパターンかもしれない。
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