虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

当千の試練 その03



 ゲームのコントローラは多岐に渡る。
 対応するハードに合わせた物を使わなければならないが、一部の者はそれすらも去節して自身に気に入ったコントローラーを強引に使えるようにしてゲームを行う。

「何が言いたいかって言うと、つまり──」

《展開、完了いたしました》

「よっしゃあ、やってやる!」

 コントローラーを握り締めた俺は、画面に映る魔物を観ながらカチャカチャとボタンとレバーを動かしていく。
 すると観ていた画面の内、少し揺れていた方のカメラが操作に対応して動き始めた。

「よし、これならバッチリだ。まずはこっちのコントローラーでやってみようか」

 魔物が襲い掛かってくるので、レバーを横に動かして回避行動を取らせる。
 そして魔物が向かった方へ目がけて攻撃を取るよう、ボタンを押して指示を行う。

「──しゃあっ!」

 持たせていた装備の性能からか、撫でるように当たった刃によって魔物は地に伏す。
 もがく姿は羽を盗られた鳥のようだが、何もしなければ古代人たちに被害が及ぶ。

 もう一度コントローラーを操作し、刃をそのまま魔物の心臓へ突き刺した。
 生々しい感覚は無く、ゲームをやっているように思えてしまう。

 そして、一言──

「まあ、それを望んだんだけど」

《旦那様、来客がもう一体》

「あいよっ、すぐにこれのまま行く!」

 コントローラーを動かすと、それは関節を曲げて動きだす。
 筋肉などの心配はなく、駆動さえ確保できていれば目的地に辿り着くことができる。

 人形のように……というか人形の真っ白な肌が光に映え、画面を明るくする。
 のっぺりとした顔に嵌めこまれたカメラが揺れ動き、空から人形を観測するカメラの中に映りこむ。

「ドローンと同期、目的地まで自動操作でっと……とりあえず休憩だな」

 勢いよく駆けだしたものの、思いの外目的地が遠かったので自動操縦にしておいた。
 車だって自動で動くような時代だ、何が悪いと訊かれることはないだろうが……美味しいところだけ操作してもいいじゃないか。

「『SEBAS』、あと目的地まで?」

《残り二十秒》

「よし、操縦を手動へ切り替え!」

 お茶を取りだし飲んでいて俺は、その報告ですぐに運転を再開する。
 拙い操作で人形を走らせ、二十秒ほどの距離を縮めていく。

「見つけた! あれがターゲットか?」

《はい、間違いございません》

「ボス戦は任せろ、どんな奴だって俺のコンボで沈めてやる!」

 まあ、負けてもストックが有るからな。
 コンテニューしてでもクリアしてやる。


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