虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

バトルロイヤル その10



 ロボット兵たちが暴れ回った結果、休人は死を逃れるために安全域に引き籠もった。
 一時は結界内からの攻撃を試みようとする者もいたが、それが無意味だと分かってからはほとんどの者が破壊を諦める。

「これで任務完了っと」

《旦那様、撤退を行います》

「ああ、それでいい……あっ、もう一通の手紙をみんなの所に置いてくれよ」

《ご安心ください、すでに手配を済ませております》

 さすが万能執事AIの『SEBAS』。
 俺が考えていたことを、俺以上の速さで実行してくれる。
 本当、俺にはもったいないヤツだな。

「しかし、『滅火の一日』とはずいぶんとまあ面白い名前だな」

《掲示板によりますと、『メッカ』とかけたようです》

「……名前は知ってるけど、それとどう関係しているんだ?」

 そこも抑えている『SEBAS』による解説では、メッカで崇められるイスラム教では地獄のほとんどに炎が使われているらしい。
 誰が最初にそう決めたかは分からないんだが、ロボット兵が生みだした惨劇が地獄だということでそういう名前になったとのこと。

《イベントも間もなく終了時刻となります。旦那様の優勝は、間違いなく成ります》

「まあ、ロボット兵の所有者が俺になってるからそうなるよな。やっぱり最後の雷をシメにした方がいいか」

《では、さっそく準備を行います》

 スーパーAIはすでに天空の城を完全に掌握しているのだから、下の大量破壊兵器も当たり前のように行使可能となっていた。
 少し時間が経つと、軽く地面が揺れ──何かを溜める音が足元で響き始める。

《プラズマカノン──『天の雷』発射可能時間まで……あと六十秒》

「いや、早くない!?」

《まだ使用しておりませんので、少し整備に手間がかかっております。以降は三十秒での装填が可能となるでしょう》

「そ、そうか……」

 わーい、はかいへいきだー。
 などと頭を空っぽにして忘れることもできないまま、時はあっさりと過ぎた。

《充填完了。旦那様の音声コマンド入力を確認後、『天の雷』を起動します》

「座標確認、誰もいない……生命体もいない場所だよな?」

《はい。旦那様のご指示通り、すでに結界も用意してあります。自然への影響もいっさい無いように準備は整えました》

「ああ、守護者に睨まれると厄介だ。それはどの世界でも変わらない、常識ということで定義しておいてくれ。いくぞ──『見せてあげよう、天城の雷を』!」

 少しオマージュした台詞を述べると、城は激しく揺れ動く。
 それは天が哭いた音なのだろう。
 強烈なプラズマが大気を焦がし、地上に破壊を齎したのだから。

「ふぅ……さて、どうなってるかな?」

 ドローンを近くに飛ばしてあるので、上京確認はちゃんとできる……ああ、結界がしっかりと残っていればいいけど。


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