虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

野生児 その10



 ヤーに連れられて、楽園の色んな場所を練り歩く。
 どこもかしこもモフモフモフモフ、まさにアニマルアイランドであった。

「けどヤー君、彼らには耳と尻尾だけの人と頭が全部の人と二つあるんだね」

「トー様は耳と尻尾だけだぞ」

 創作物的知識に当て嵌めるのであれば、前者が獣耳族で後者が獣頭族だな。
 実際にどう呼ばれているかは直接訊ねづらいし、あとで本でもないか探してみよう。

 そして、ヤーの父親代わりの人は獣耳族の方なのか……まあ、先にどういう意味かを確認してから耳を撫でていいかを訊こう。

「ヤー君、私たちはどこへ向かっているのかな? 目的地を教えてもらっていないんだけれど……」

「すぐ分かる!」

 まずは観光、と言わんばかりに街全部を歩かされたわけだが……この街は二つの丸で構成されていた。
 大きな丸の上の部分に、小さな丸がくっついているような……雪だるまみたいな構造だと考えてもらえればいいな。

 大きい方の丸を時計の指針で例えれば──3と6と9と12の部分で区切り、広めの通りを造る。
 12の部分から小さな丸の方へ道が接続され、繋がっている感じだだろう。

 大きい丸で分けた方は、その区切られた中である程度何があるかを決めてあった。
 商業区、歓楽区、居住区、貧困区……最後の一つは、ある意味その他の場所だったな。

「せーじゃ、こっち!」

 ヤーが引っ張る先は、小さな丸の方へ向かう大通り。
 少しばかり高級感が出始める、いわゆるセレブゾーンであろうか。

「ほ、本当にこっちでいいんですか?」

「トー様も待ってる、早く!」

「えっ? いつの間に連絡を」

「──たぶん!」

 なんだ、子供特有の勘か……って、それが一番当たるんじゃないか!
 ショウやマイの勘って、結構当たってたんだよなー。

 そんな感じで上手く現実逃避をしてると、やがて小さな方の丸へ繋がる場所へ着く。
 そこは門によって立ち入りを制限され、そこにはしっかりと警備員が立っている。

 当然だろう、だってそこは──

「って、ヤー君!?」

「おー!」

「【野生王】様! 探しましたぞ!」

「せーじゃに連れてきてもらった!」

 ヤーが俺を指差すと、その警備員は俺の向けて一礼。
 すぐに詰め所に戻ると、何やら魔道具で連絡を行う。

 そして、すぐに戻ってくる。

「セージャ様、ですか?」

「ええ、そうですが」

 そう答えると、ニコリと笑って──


「此度は【野生王】様をお連れいただき、誠にありがとうございます。つきましては──【獣王】様よりお礼を述べたいとのことでして……王城まで同行を願えますか?」


 死の宣告を、俺に告げるのだった。


コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品