虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
野生児 その05
N5W3
トビ料理による至れり尽くせりのフルコースを堪能したからか、【野生王】のブーストが凄まじいことになっていた。
今もそう、ヤーはフィールドを凄まじい勢いで駆け巡って魔物を殺し尽くす。
「おーおー、やってるねー」
《戦闘データは解析しておりますが……》
「俺には無理だろう。あれ、完全に能力値依存の動きだろうし」
年相応のがむしゃらな動きだが、その一撃一撃が王の名を冠するに相応しい威力を誇っている。
手が触れれば体が吹き飛ぶし、走った風に呑まれても死にかけまで追い込まれる。
「あれで加減してるんだよな……俺が新鮮な方が美味しいって言ったから」
見た感じ、絶命している魔物はいない。
生と死の狭間をギリギリの状態で維持させられ、本当に新鮮なままを保っている。
「草原が荒野に、荒野がサバンナに……運営もフィールドの配置が雑すぎないか? いやまあ、一つ一つがここまで広大だと仕方ない気もするけどさ」
海なんて、一つ跨ぐのにジェットエンジンが無ければだいぶ時間をかけたからな。
こっちでテクテク歩くにも、本来であれば野営が必要となっていただろう。
「俺もヤー君も加速できるし、襲ってくる魔物はとっくにお陀仏だし」
南無と手を合わせてご冥福を祈る。
同時に思う──いただきます、と。
「せいじゃー、ただいまー!」
「お帰りなさい、ヤー君。たくさん持ってきましたねー」
「せーじゃのごはん、おいしい! だから、たくさん作る!」
「はいはい、分かりましたよ」
食うか食われるかの弱肉強食、間違いなく俺はピラミッドの最下層に居る存在だ。
ならばどうするか、誰かの下について生きていくしかないではないか。
子供を飯で買収しようとも、できるだけ死にたくないと足掻くのが大人ってもんだ。
……息子や娘の前なら、必死にカッコつけるがそれは例外だぞ。
「ヤー君、血抜きはできますか?」
「血抜き? うん、できる!」
「そうですか。では数も多いですし、勝負をしてみませんか?」
「勝負?」
子供らしく、瞳がキラリと輝く。
若い頃は、そうやってなんでも決着をつけたがったな……(遠い目)。
「ヤー君が持ってきたこの魔物たち、半分に分けて先に血を抜き終えた方が勝ちです」
「面白そう!」
「私が負けましたら、特別なメニューを追加しましょう。美味しいですよ」
「やる!」
子供から何かを搾取しようとは思わないので、ヤーから何かを払うといった言葉が出ない内にゲームを始める。
当然、:DIY:を持つ俺の方が圧倒的に速くなってしまうのだが……そこは調整だ。
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