虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

森林保護



「ああ、こういう場所なのか」

 木漏れ日溢れるリラックススポットを抜けると、お次の地帯が俺の視界を覆う。

「薬草か……まあ、妥当っちゃ妥当か」

 生え誇る一面の草々。
 その一本一本が薬効を持つ植物で、魔力を僅かながらに帯びている。

「しかもこれ、毒性のあるヤツが一本も生えてないってんだからボーナススポットだな」

《……確認終わりました。やはり、間違いなくそうでした》

「レアだねー。初心者がここまで来れっていうなら、まさに大助かりだろ」

 こういう場所があるなら、行ってはいないが冒険者ギルドにもここの薬草を求める依頼の一つや二つ、出しているだろう。

 金に困ればここに来ればいいし、先ほど見た脈があるので枯渇はしづらい。
 ……採取のスキル上げにも使えるな。

「なんかこう、毒の成分を浄化する何かがあるのか? 少し気になってきた」

《解析は行いますが……地脈の影響である可能性が高いです。捜索しますか?》

「ああ、うん。ドローンの配置場所をそこにしておけば、守護役としても働いてくれるだろう。ったく、守護獣がちゃんと常時働くような奴なら、俺みたいな奴に付け入る隙なんて無かったのに……」

 えっ、俺がどういった考えでここに関わろうとしているかって?
 特に意味は無いが、例えるなら──そう、森林保護だな!

「団体じゃないのが残念だが……正義が見逃した悪を裁く、なんかカッコイイな」

 実際の森林保護団体とは、いっさい関係がございません──なんてテロップが出てきそうだが気にしない。

 だが事実、森での活動方法がグレーな奴らなんてごまんといる。
 森のヘイト値を溜めなければ、何をしてもいいなんてことにはならない。

 そういうことをする輩を、俺が裁いてやろうと言っているのだ。

「──なんて、傲慢な台詞セリフは無いな」

 ボランティア、程度で充分か。
 道端でポイ捨てをする若者に注意した、俺のやっていることのイメージはそれぐらいだと思う。

 いや、監視カメラを置いてそこから注意勧告が出るようにしただけなんだし……それ以下だろうか?

「『SEBAS』、ここのボスはどういう奴か分かっているのか?」

《申し訳ございません。旦那様が離れた後、監視ドローンを介して調査を行う予定でございました》

「そっか。なら、仕方ないか。ボスが森を直せるのか、そこだけ知りたかったんだが……まあ、別の機会でもどうにかなるよな」

《発見次第、報告を行います》

 ピクニック予定地なので、できるだけ環境は好い状態であるのが好ましい。
 全員が見つかるまで、ちゃんと今の状態程度には森を維持してもらいたいな。


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