虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

革命 その02



「さて、始まったみたいだな……」

 至る所で立ち上る煙を眺め、独り呟く。
 どこもかしこも闘争の音が鳴り響き、生と死の炎が激しく燃え盛る。

「しかし、ここは誰の領域だったっけ?」

《【暗殺王】です》

 そうか、ここはあの人の領域だったのか。
 まだ詳しく話していない人ではあるが、英雄の狙いがここになるとはな……。
 目的の場所として、この地を選ぶことに意味があるんだろうか。

「この地の神代魔道具に関して、情報はそういえば無かったな。秘匿しているというのもあるけど、謎が多い場所だ」

 暗殺ギルドなんて場所は、普通の街の普通の場所に配置されてはいない。
 暗躍街とは違う形で、今の人々が作りだした裏側の街にあるそのギルド。

「そんなギルドを統括する本部が、この場所にはある。人々の死を勧めて促す、死神様とは別の形での死の象徴」

 だが──英雄に連れられた者たちが戦うのは、彼らではない。

「どういった用途で使われているんだ? あれもまた、神代魔道具の一種なのか」

 のっぺらぼうな人形が、真っ白な武器を握りしめて彼らと戦っていた。
 生きてはいない、無機質な瞳の中に数字の羅列が浮かび上がっている。

 まるで何かを守るように、それらは捨て身の攻撃を仕掛けていた。

《おそらく、守備兵なのでしょう。量産型を【暗殺王】の一派が掌握、有効的に活用しているのかと思われます》

「まあ、暗殺者が表立って戦闘するわけにはいかないか……プロなら一般人風の戦闘も装えるんだろうけどさ」

 そこまでして戦うほど、彼らもこの行動に対応する気はないのだろう。
 実際に生体反応のある者は、誰一人として暗殺ギルド側にはいない。

 さて、英雄様の出番はまだだろうか。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「『生者』め、本当に何もしない気か……」

 強化した視覚には、ただ茫然と立つ例の人物の姿が入る。

 ──『超越者』、人の理から外れた存在。
 その一人である『生者』が、今私たちの計画を傍観していた。

「ただ、いくつものポーションが、成功の確率を高めてくれる。それだけは感謝だな」

 訪れたこの地にある一つの代物を求めて、私たちは革命を起こした。
 しかし、求めた物が私たちの行動を防ぎ、同志たちを傷つけていく。

 治療目的で『薬毒』にも嘆願をしたが、彼の目的は病などで苦しむ者の救済が主だ。

「無限の食料を得る神代魔道具、その副産物としてあの兵士を作りだしている」

 真っ白な人形が、今なお同志と戦う。
 暗殺ギルドはまだ動きを見せていない……だから私も動くことはできない。

「なんとしても、ここを手に入れる……手段なんて構ってられない」

 苦しむ人がいるなら、私は手を伸ばそう。
 そこに救われるべき者がいるのであれば、絶対にだ。


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