虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

煽て



「『超越者』だということ、もう否定はしないな?」

「ええ、それは真実であり妄言であります。ですが今は『超越者』であると、答えておきましょうか」

「……どういうことかな?」

 予めそう断わっておかないと、俺が嘘つきというていから会話が始まってしまうのでな。
 若干苦しいが、言い訳はさせてもらおう。

「私は正式に、『超越者』というわけではないのですよ」

「なに? そもそも『超越者』とは、なった瞬間から『超越者』なはずだ」

「ですから真実でもあると伝えたのですよ。説明は最後まで聞いてください」

「むぅ……分かった」

 後ろで見守る部下の皆様も、俺がどんな弁明をするかが気になっているようだ。
 大人しく、だが興味があるのか瞳を輝かせる英雄たちに向けて説明を始める。

「『超越者』とは集団です。卓越した力の持ち主が集まり、情報や力を共有する……ギルドのようなものです」

「ふむふむ」

「他の『超越者』に発見された場合、ギルド本部に連れていかれて強制的に登録させられる……そんな風に考えてもらえればいいのですが。ご理解いただけましたか?」

「君が言いたいのはつまり、自分は望んでそうなったのではない……ということか?」

 まあ、子供でも分かるように簡単に説明したからな。
 後ろで見ている方たちは、英雄が理解していることに驚いているようだが──これからはちゃんと、物事を説明してやるんだな。

「はい。さすが英雄様です」

「ふふん、当然さ!」

 おっと、調子に乗ってしまったようだ。
 扱いやすいというかなんというか……おそらくだが、『超越者』やそれに準する強者が相手でなければ、後ろの者たちがちゃんと英雄を止めるのだろう。

 相手が何をするか分からない厄介な相手、それを止められるのはこの中では英雄だけ。
 余計な発言で身を滅ぼすことは、いくら英雄に付き従う者たちでもできないのだろう。

「私はそれを拒み、逸れとなっています。称号としての『超越者』ではありますが、その集団には属していないのです」

「それはいったい、どうしてかな?」

「自由が好きなので」

 首を傾げた英雄は、すぐさま部下に相談を始める。
 耳を澄ませば、やれ「本当なのか」だのやれ「またペースに呑まれています」だの……
正解も混ざっていたな。

「えっと、本題に入っても良いですか?」

「話しかけたのはこちらなのだが……まあ、構わない」

 寛大な英雄の言葉を受け、俺は告げる。

「──貴方たちのしていることが知りたいです。案内してもらえませんか?」

「……は?」


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