虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

情報ギルド その12



「──完成だ。受け取れ」

 何か書類作成系のスキルでも持っているのか、手を使わずに目を瞑っていた【情報王】の目の前に、紐で縛った紙筒が現れる。
 それを解いて中身を検めると、【情報王】はポイッと俺にそれを渡す。

「ありがとうございます。では、私も改めましたら情報をお教えしましょう」

「待て、先に解除の方法を教えろ」

「私の手元から現物が離れた今、解析を始めているのでしょう? 一方私は、まだ検めることすらしていません。これは少し、不平等ですよね」

「……好きにしろ」

 そう言ってくれるなら、好きにしないと駄目だな。
 紐を解き、紙を広げて情報を調べる。
 首の巻いたチョーカーを介して、記された情報は『SEBAS』に送信される……正しいかどうかなんて、すぐに分かるのさ。

「おや、私でも思い当たるようなご職業の方の情報が無いですね」

「……何が無いというのだ」

「【魔王】、そして【勇者】です」

「【魔王】は売れる程の情報は無い。文献を漁れば出る程度だ。【勇者】は代々能力に違いがあるから料金が足らん。知りたいなら、対価を払え」

 ふーん、そういうものなのか。
 たしかに【魔王】は『騎士王』が教えてくれた分の情報で充分だし、その気になれば直接訊けばどうにかなる。

 だが【勇者】、そちらは知っておきたい。
 この世界に【魔王】が居れば、対の存在として必ず存在するだろう【勇者】。
 ○○の勇者、とかいう称号でいくつか能力に変化があるのかな?

「──そうですか。では、隠蔽の解除法をお教えしましょう」

「それが対価とはならんぞ」

「ええ、結構です。別の人物に情報を求めますので」

 そう言って、スラスラと『SEBAS』から確認しておいたやり方を説明する。
 黙って聞く【情報王】ではあるが、物凄い殺意を隠していることを死亡レーダーが教えてくれた。

「──以上です。何か質問はありますか? 無ければ今日のところは失礼しますが」

「……私に、それを尋ねるのか」

「えっ、何か仰りましたk──」

 バンッ、と机に手を叩きつけて【情報王】がキレる……カルシウムが足りないんだな。

「この俺が、情報を尋ねることなどあるわけないだろう! あらゆる情報は、すべて俺の元に自然と集まり、支配下に入る! 貴様ら星渡りの民とて同じだ! やがてこの街を俺が支配したら、そのすべてを晒してやる!」

「……それだけですか? では、私はこれで失礼します」

 そう言って、扉に手をかけて──クルリと後ろを向いてもう一言だけ。

「では、賭けをしましょう。貴方以外の誰かがこの街を支配した時、私はある情報を街全体に伝えます。それでもなお、貴方が私に教えを乞わないのか……」


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