虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
情報ギルド その03
「──なるほど、ここが情報ギルドの本部ですか。大きいですね」
少年の案内で辿り着いた、目的地。
日本の首都に在りそうな、超巨大ビルのような物がそこにはあった。
周りの建物もまた、さすがにそこまでではながビルだし……。
文明感をいろいろと無視しているな。
カジノであったり、ビルであったり……どこまで時代をスルーした街なのだろう。
「そうだよ、おじさん。この長い建物が情報ギルドさ」
「ありがとうございます……あっ、これはおまけに取っておいてくださいね」
再びメニューを操作して、三枚の硬貨を取りだして少年の手に乗せる。
驚く表情をする少年、まあとっくに支払いは済ませてあるもんな。
「お、おじさん。チップ──って、だから金貨じゃないって! しかもこれ、純金の硬貨じゃん! ……さっきの銅もそうだったし、おじさんって実はお金持ち?」
「いえ、そうではありませんよ。休人から頂いた物です」
そう、ささっと取りだしたのは金色の硬貨である。
……ちなみにだが、休人が出す硬貨はすべて純正なので商人には好まれるぞ。
収納したコインを自動査定されて、額が表示される──なので、騙されてもすぐに気づけるというのも利点の一つだろう。
「……へー、休人か」
「もしや、この街も休人が来てから何か変化があったのですか?」
「…………」
「先ほど、金貨を渡しましたよね?」
「そうだった、うっかりだったよ」
割と少年も強欲みたいだ。
しかしそれは取り繕った表情であり、実際にはなんだか引き攣っているように見える。
「……アイツらの情報は、知らないものばっかりだったから。最初の内はどっちも得ができたんだけど……どいつもこいつも、同じようなことばかり言うんだぜ? たまに一度聞いたヤツを詳しく言う奴もいたけど、ソイツはソイツでわけが分からないし……」
前者がにわか知識、後者が理系か?
アニメ系の知識は魔法関連であれば貴重な情報になるだろうし、ビルのような建物がある神代文明に繋がる情報もある。
「……やりすぎた、わけですか」
「アイツらが勝手に言ったことなのに! その巻き添えで、口封じされた奴もいる……悪いのはこの街を欲しがる奴らだ、オイラたちは今の街で満足してるのに」
人は時に、共有すべき知識を禁忌と定義付け拒絶することがある。
情報が渡ることを恐れ、封殺し、誰の手にもいかないようにするのだ。
「……君にとって、この街はどうあってほしいのかな?」
「オイラは他の街なんて知らないし、休人が言っているような街が理想でしかないことも分かる。だから、今の街でいいんだ」
そう言った少年の顔は──少し寂しげなものに見えた。
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