虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

カジノ その05



「──軍資金は順調。稼ぎに稼いだチップは大量に溜まった」

 ブラックジャックによろしく。
 人の仕草も挙動も完璧に把握する『SEBAS』によって、ディーラーがこっそり涙目になるほどの圧勝である。

 とあるソーシャルゲームでルールを理解していたので、俺としてもやりやすかった。
 ダブルやスプリットなど、それを使う絶好のタイミングは『SEBAS』が指示してくれるので簡単に勝利できる。

「さて、となると……もう少し上のランクで遊べるか」

 カジノとしてのランクはこの場所がトップである……が、別に賭けれる額が最高だとは言っていない。
 何より、貰えたのはVIPカードであって、この場はまだ通常エリア。

 エリアへの入場権利があっても、VIPと裏VIP会場には入れていなかった。
 だがブラックジャック先生の儲けで、その資格を得ることができた。

「まあ、まだVIPだけだけど……とりあえず行ってみようか。『SEBAS』、そこへ案内してくれ」

《畏まりました》

 VIPエリアも隠しているようで、そこへ行くためには街中同様に、面倒な手順を踏まなければならない。

 スタッフにバレないよう、いちおうは偽装工作を施している身だ。
 案内してもらえばその最中に、何かしらの詮索を受けるだろう……それは避けなければならないしな。



 いくつかのゲーム会場を通過した。
 やはりチップのレートが高い分、当たり外れが激しい。
 そうしたゲームの被害者が、至る所で悲鳴の声を上げている。

「……アイツらは、どうなるんだ?」

《払える限り、自身が有するモノを支払っていきます。スキル、職業、肉体……すべてを失えば奴隷堕ちです。初めからスキルを買われようと、奴隷を選ぶ者もいますが》

「プレイヤーが奴隷を買うことは……」

《可能です。できることと、認められることは別ですが》

 まあ、外聞が悪いだろうしな。
 プレイヤーの中に奴隷堕ちするものはいないだろうけど(死に戻りがあるから)、創作物に憧れて奴隷を用意すれば……一部の業界以外から、冷たい視線が向けられるだろう。

 こちらの世界の場所の中には、それが普通だと認識している場所もあるので、そこでならば問題ないだろう。
 だが少なくともほとんどのプレイヤーは、それを否定するよな。

「しっかしまあ、運営も盛大な舞台を整えたもんだ。こんなカジノ、いったい何を元にイメージしたのかさっぱりだよ」

 ルート案内によれば、間もなくVIPエリアに到着するらしい。
 今の場所ですら俺には豪華絢爛だと思えたのだ……語彙力がどれだけあっても足りないよなー。


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