虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

カジノ その02




「そろそろ、ここも止めといたほうがいいかもしれないな」

《では、次はどちらへ?》

 ルーレットで儲けに儲け、普通に楽しむのであればかなりの間遊べるだけの額が、現在俺の手元にある。
 ……ただ、まだ最高のカジノへ向かうための条件は満たしていない。

「そうだな……一気に稼げるところだな。わざわざチマチマとバレないように稼いだんだし、最後は馬鹿が大勝負に挑んで運よく勝利した、なんてシナリオでどうだ?」

《では、シナリオ通りに進むように調整を行いましょう……しばらくお待ちください》

 さすがに凡人のアホな計画ともなると、いくら『SEBAS』といえども考えつくのに時間がかかりそうだ。

「なら、その間にやることを決めておこう。一番儲けられそうな場所……場所……」

 考え込んでいると、どこからか歓声が届いてくる。
 そこに顔を向け……笑みを浮かべた。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 賭博場の中でも、一獲千金を狙う者たちが集う場所──『コロシアム』。
 強者たちが武を競い、賭け狂いたちがその勝敗に金銭を注ぎ込む場所である。

≪さぁ、次の試合は大勝負! 休人を八人集めたバトルロワイヤル! 誰もが優秀な戦士として、冒険を重ねてきた強者です! 今回の特別ルールとして、魔法のみを使う者には回復アイテムが渡されます≫

 中でも休人を用いた、特殊ルールでの試合はとても盛り上がる。
 決して死ぬことがないため、どれだけ過酷な状況を課して問題ない。

≪この試合は三連続で行われ、その度に開始時の距離が遠くなります! 見事ピタリと勝敗を当てた方には、多大な額が与えられることでしょう!≫

 三試合すべての勝者を当てなければ、当選することがない。
 そのため当てることはとても難しく、まだ成功した者はごく僅か。

「──すみませんが、今アナウンスで宣伝している方法で賭けてもよろしいですか?」

 だがそこに、一人の男が勝負を挑む。
 受付をしていた女性は、入場の際に男が受け取ったカジノカードを預かり、これまでカジノで儲けた額を調べる。

(……これぐらいなら、大丈夫ね。これまでの当たりで枷が外れて、つい大きく出ちゃったってところかしら?)

 そう勝手に思い込み、参加を受理してしまう受付嬢。
 本来、当てすぎた危険人物や破産させてはいけないVIPなどはここで止めるのだが、男の記録にはそうした要素がなかったため、その危険性に気づくことはできなかった。

「では、どういった組み合わせで?」

 受付嬢が笑顔で尋ねると、男もまた笑顔で組み合わせを答えるのだった。


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