虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

巨大魔法陣



 S13W6

「計測が終わったか……」

 新大陸──『リーヴァン』と呼ばれているらしい──の計測はとっくに終わっていた。
 イベントのために奮闘しているときには、すでに終わっていたそうだ。

「大きさはそこまでじゃない。けど、中央部に国が形成されている……なんだか不思議な形をしているな。普通だったらただの偶然で済ませられるが、ここはゲームだから何かの意味があるんだろうな」

 魔法陣のような模様を、建物と道の配置で創り上げていた。
 これで魔力が通るようになっていれば、確実だな。

「俺も似たような街の形にしてあるし。術式の解析を頼む。『天』の解析が最優先だからそんなに使わなくてもいいが」

《畏まりました》

 とりあえず、空撮されていた画像を送って情報の確認を頼んだ。
『魔道具適性0(笑)』の知識はすでに共有してあるので、検索すれば一瞬で済む。



《分かりました。こちらの魔法陣は──》

「……やっぱりか。どうしてこうも面倒なことばっかり起きるんだか」

 検索結果はとても虚しく、いつも通りだと納得できるものだった。
 LUCはいつでも仕事をしているな。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 S15W6

「ここが『ドゥーハスト王国』か……」

 入国審査を終えて街に入った俺は、誰にも聞こえないような声で小さく呟く。
 ここまで来るのにも、いろいろとあったんだよ。

 一区画多めに跨いでいることからも分かると思うが、その間でのトラブルがまた運の無さを痛感させてくれた。

「習慣はあっちの漁村と大して変わらないけど、やっぱり規模が違うよなー。田舎と都会は違うんだから当然だけど」

 言語は同じなので再登録する必要はない。
 というよりも、島全体で同じ言語を使っているようだった。
 遠くに見える城を眺め、呆然としていた意識を正して移動を始める。

「場所が分かっている系の『超越者』はこの大陸にはいない。だけど放浪系の『超越者』がいないとは言い切れないからなー。判別機は用意してあるから居るなら探せる……実際居てほしいか自分でも謎だけど」

 出会いは宝となる、みたいな言葉が地球にはあるけど、会わない方が良いと思える出会いもあるだろう。
 すべてが糧になると言っても、克服できなければただのトラウマだ。

 彼らもまた同じ。
 これまでは異常な力を正道のために使う者たちばかりに会っているが、そうではない自身の黒い欲望のために動く者と接触すれば、それは災難としか言いようがないだろう。

「願わくば、俺と家族と関係者にそういった『超越者』が接触しませんように」

 今はただそう願うしかなかった。
 ……家族が被害を受けるというなら、もちろん俺がすべて引き受けるけどな。


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