虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
従魔について
「──と、いうわけだ。さっさと魔物関連の情報すべてを吐きだせ」
「……お前、いきなり『と、いうわけだ』って言われて説明する奴はなかなかいないぞ」
「そこで自分は含まれない、と言わないのがお前の良いところだよ」
本当は舞に聞いてもよかったんだが……真に訊きだしたい部分的に、拓真に聞いた方が都合が良かった。
仕事も終わり、帰宅途中。
電車に乗り込んで話しているのが現状だ。
「魔物関連って、具体的にどういうことを話せばいいんだよ。生態か? 弱点か?」
「いや、従魔システムと魔人についてだな」
「後者はともかく前者は舞ちゃんに……。二つがセットだから話しづらいのか。もしかして、女の子型の魔人を手に入れる機会でも訪れたか?」
「…………お前は、すべてを知って逆鱗に触れる覚悟があるのか?」
「いや、ない。とりあえず従魔システムについて簡単に説明しよう」
長い付き合いからかすぐに話題を切り替える拓真……こいつは知っている、もし逆鱗に触れた場合を。
それは俺の、ではなくある人のだからな。
「従魔ってのは、舞ちゃんみたいな調教士や召喚士系の職業向けのシステムだ。野生の魔物とかを使役して、戦闘に参加させることができる」
「まあ、ホ°ケモンだよな」
「ただこれ、別に職業に就いてなくても従魔は手に入れられる。特別なアイテムを使うことで、一体だけだがな。さっき挙げた二つの系統の職業の場合は、そういうアイテムが無くとも複数操れるのが利点だ。従魔の補助に関するスキルも手に入れやすくなるしな」
「フルパーティーにもできるってことか」
チャンピオンリーグでもあれば、就いていない者はさぞキツイだろう。
周りはフルメンバーで挑んでくるのに、自分は相棒の電気鼠しかいないのと同義なんだから。
「他にもいろいろと利点はあるんだけど……最大の利点はあれだ、進化先をこっちで選べることだな」
「ステータスは、それ以外の職業でも変更可能なのか?」
「そういうことだ。だが、進化先だけは例外として別枠。パンチかキックかカポエラかを選びたいなら、能力値を操作するんじゃなくて職業に就けってことだ」
「また古いヤツを……それって金と銀の頃の話じゃねぇか」
GPSを使ったアプリ版だと、それぞれ攻撃・防御・HPがもっとも高いやつが、それらに進化するらしいがな。
そうした個体による変化は関係なく、職業に就くことで決まるのか……まあ、たぶん個体の能力値調整とか性格、その個体がどう進化したかという望みでも変化するんだろう。
「どうせお前のことだ。従魔の考えで進化できるとか思ってたんだろ? 実際それは間違いじゃない。だが、職業に就けば無理矢理にでも変えられるってことを覚えておけ。従魔には嫌われるけどな」
ここで従魔に関する話は終わった。
舞は……たぶん、大丈夫だろう。
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