虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
陸海空
アイプスル
「……飽きたな」
イベントのため、努力を行うのも。
生産も何度かやったし、規格外という枠に収められなきゃランクインも確実だ。
しかし他のこと──討伐は諦めよう。
よくよく考えれば、社会人が廃人に勝つ術など無かったんだ。
もっとも争う者の多いその部門は、決して普通の存在ではランクインすら無理だな。
俺が悩んでいると、人型のゴーレムがここにやってくる。
「では、どうされるので?」
「カエンか……また『超越者』探しでも再開しようと思う。『学者』は掲示板に学園の情報が上がればすぐ分かると思うが、未だに住所不定の『超越者』はたくさんいるしな」
何かしら、『超越者』は卓越した能力を有している。
『闘仙』は身体強化、『龍王』は結界、『騎士王』は万能さ。
他はそうだな……『剣矢』──里長(兄)は弓の技術、『剥意』──里長(弟)なら幻術、『錬金王』であれば錬金術とかだろう。
ちなみに、『冥王』はよく分からない。
死に関する何かだとは思うが、一度の邂逅だけでは理解できなかった。
「いいところは可能な限り、こっちに取り入れていきたい。結界は不完全だがだいぶ模倣できたし、戦闘技術も型だけは取れた。できるだけファンタジー感溢れる技術、それらを優先的に取り込みたいな」
「そうですか」
海に眠る王国、天に浮かぶ都市……地球でもそういう逸話があるけれども、実際に今も使われている場所なんて存在しない。
こっちの世界なら、それがある。
少なくとも湖の底で集落を造る、そんな種族がいることは確認済みだ。
「けど、海は広すぎて特定できないし、天空都市は常に動いているみたいだ。だからこれら二つは諦めて……別の奴だな」
潜水圧に耐えられるかどうか、や空を自由に飛べるかどうかなどの問題もある。
だが、そこに関しては魔道具を組み合わせればどうとでもなると『SEBAS』も言っていた。
ボートの兵装も着実に進んでいる。
普通のボートではそもそもありえないが、いつかは陸海空、星々征服するなんて……と言えるぐらいの準備を整える予定だ。
◆ □ ◆ □ ◆
クエストをやって、貢献度を稼ごうと思ったが……それも無理だったな。
今日もまた、ポーションを納品しに行ったついでに訊ねたが、やはりくれなかった。
「──仕方ない、あそこに行くか」
俺が街において活動するのは、主に三つしかないのが現状だ。
一つは金を満たす場所──生産ギルド。
一つは食を満たす場所──串焼きの屋台。
そしてもう一つ、あるモノを満たす場所に俺はこれから向かう。
その場所とは──
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