虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

野焼き



 N2

 ゴーレム作成で少々エラーが発生したが、それ以外の錬金技術はある程度の成果を齎してくれた。

 イメージ通り……とまではいかないが、それでも突然人の言葉を介したり、などといった事態は無かったし……大丈夫だな。

「そして今日は、もっと北に来ました」

 このエリアは馬車が通るために踏み均された道以外、N1以上に長い草が生い茂る場所となっている。

「プレイヤーが定期的に燃やし尽くしているというのに、凄まじい再生力だよ」

 そういった依頼もあるらしく、経験値稼ぎになるということで数多くの初心者魔法使いが火を放っている。

 護衛役もいるし、魔物が勝手に燃えて経験値はガッポガッポ。

 初めの内は物理で殴る方が早いし、こういうときでないと使いどころが少ないだろう。

「除草剤を使えば半永久的に再生を止めることもできるけど……恨まれそうだし、使うのは駄目だな」

 まあ、『アイプスル』に雑草なんて生えてないんだけどな。
 なんでも作りたくなった時に作る、これが発明には大切だと誰かが言っていたような気がする。

 厭々作った物より、楽しみながら作った物の方がいろいろと良い気がするだろ?



 火を放っている場所は、煙が出ているのですぐに分かる。
 それに道からは離れているので迷ってそこへ行く、ということは滅多にない。

 おまけに煙なんて目印があれば、そこへ魔物が向かう……そう、つまりは俺の場所へ魔物は来ない!

「──と思っててすんませんした」

 残念、俺のLUCうんは0だった。
 煙の方へ行こうとする魔物、つまり進路方向が偶然俺と煙を直線的に結ぶ場所から現れる魔物に襲われ続けた。

 蛇や狼、スライムやゴブリン。
 狼やスライムは別の方角でも見たことがあるが、若干色が異なっていたので鑑定で視れば別の名前を確認できたと思われる。

 俺のクレームで手に入れたサンプル品のような(鑑定Lv-)では、結局どれだけ視ようと全部『?』表記だけどな。

「人が来ると困るから結界は使えないし……スタンガンは使えるけど、今は錬金がブームだからなー」

 偽装も含めて、短杖型のスタンガンにしておいたのだ。

 なのでそれを用いて痺れさせることも可能だが、今俺の中で燃え滾るのは錬金に対する情熱の炎。

 偽るわけにもいかないので、それっぽいことをして魔物を倒そう。

「インスタントシール~(濁声)」

 そう言ってポケットから取り出したシールには、幾何学な方陣が刻まれている。

 それを両方の掌に貼り、勢いよく地面に押し付けると──

「これぞ、錬金術で行う攻撃だ」

 地面を錬成し、鋭い棘のように変化させて魔物たちを突き刺す。

 スライムだけは物理無効だが、核の部分を破壊すれば倒せるので結局は棘の餌食となってドロッと形を崩した。

 鋼の要素があれば、よかったんだけどな。


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