虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

会いたい人



 これで俺は、首都直下ミサイルの発射も可能となったわけだ。
 座標位置さえ知ってしまえば、核兵器すら送り込むことが可能……やらないけどな。

 転送装置の座標を弄れば行ける、というわけではないのが残念だが、それでも自分の足で向かえるようになっただけ幸いだ。

 どうして転送装置で行けないかというと、そこには淀み封印用の結果が関係する。
 途切れているので渡れない、それだけだ。

 こっちの人が転移を行えばできるのに……理不尽だよな。

「しかし、BとRって、まさかの天国地獄のパターンか。いや、『冥王』のこともあるからそのまんまってわけじゃないだろうけど」

 地下室を意味するBasementと、屋上を意味するRoofTop。

 座標はZ軸まで計算しないと、どうやら辿り着けないようです。

 失敗しても[*いしのなかにいる*]にはならないゲームなので、まあ何度挑戦しても問題ないんだが……どうせなら成功したい、それが冒険ってヤツだ。

「一番近いのが『冥王』だが、他に知っている奴らは……だいたい遠い所か。『騎士王』なんて、二十区画は離れてるじゃないか。しかもマーリンも『超越者』だったし」

《マーリンに飛ばさせている可能性が高いですが、『騎士王』自身が膨大な量の魔力を有しています。己の力だけで旦那様が活動する街まで転移することも可能かと》

「本当、『超越者』って理不尽の権化だな」

 自分のことは棚に上げて置こう。
 傍から観れば──何度攻撃しても死なない奴もまた、一種の理不尽なんだから。

「他の星に関する情報もあるな……うん、あの人たちも載ってる」

 そこには『剣矢』と記されており、当時の記憶が蘇ってきて体を震わせる。

 あの人、いつもスマイルで俺をイジメてきたんだよな。

 一番ヤバかったときなんて、同じ苛めっ子であるはずの里長(弟)の顔が、思いっ切り引きつってたんだぞ。

「他に誰か会えそうな奴は…………お、これがいいのかな? ほとんどの奴が住所不定だし、『超越者』って放浪が好きなの?」

《自分の目的のために動くが故、囚われることを拒んでいるのでしょう。国の統制というものは、簡単にではできませんので》

「はい、いつもお世話になってます」

 俺も『SEBAS』が居なかったら、星の管理だけでこのゲームを終えていたかもしれないので、それはよく分かる。

 あと思えば、自由に彷徨ってる方が自分の目的を果たせるってのもありそうだな。

 強くなるにしても何かを探すにしても、ただジッと待つよりは、自分から動いた方が見つかるだろうし。

「とりあえず、この人には一度会ってみたいけどな……」

《『錬金王』、ですか》

「賢者の石の生成方法とか、いろいろと知ってそうだしな。ゴーレムとかそういうのもあれば、防衛用に教えてもらいたい」

 想像するだけならタダなんだし、創造するのも:DIY:があれば簡単にできる。
 早く会ってみたいな、『錬金王』。


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