虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
闘仙 その12
創造主であるツクルの指示を受けて宙を飛ぶドローンたちはいっせいに動き出す。
自身の内部に配備されていた兵装を取り出して帝国の兵たちに向ける。
――LMG04『エアロス』
ドローン用に小型化された無数の機関銃、その銃口が全て帝国兵に構えられる。
遠くで創造主がサインを送ってきた。
その意味を結界を張る別働ドローンが解析すると攻撃部隊に転送する。
――コウゲキカイシ
送られてきた信号にドローンたちは銃の引き金を引いていく。
猛烈な弾丸の雨が帝国の兵たちに及ぶ。
ただの鉄でできた弾ではなく術式がライフリングされた魔法の弾である。
正確には魔力が籠められた弾が機関銃内で術式を刻まれて魔法を発揮する代物だ。
悲鳴を上げて逃げ惑うがドローンたちに上から攻撃を行われているためどうにも抗うことができない。
魔法による防御も高位の魔法が籠められた弾丸を相手取ることはできず、それ以下の位階による魔法では防ぎようもない。
辺りで爆発や雷鳴、気温の変化などが起き続け帝国の兵たちはパニックに陥る。
「狼狽えるな、愚か者ども!」
だが、精鋭たちはそうではない。
魔法でもなんでもなく、着込んだ装備と自身の能力値だけで銃弾を防いでいた。
銃の長所であり短所は一定のダメージしか見込めないこと。
弱者でも一定の強者を殺す術であるのと同時に殺せなくなる術でもあるのだ。
だがそれでも、兵の数は一気に減った。
ツクルの予想通り兵の約三割から四割が銃弾の餌食となった。
「では、俺も行こうか」
それを見ていた『闘仙』は兵たちを落ち着かせる精鋭たちの元へ向かう。
外気から取り込み練り上げた仙丹を力強く踏み込んだ脚に籠める。
「――“地裂脚”」
踏み込んだ脚が起こしたエネルギーを体全体をねじって取り込み――再び踏み込む。
反芻したエネルギーが地面の中で炸裂して精鋭の数人を呑み込む地割れを起こす。
また別の場所で、ツクルもフラフラと歩いていた。
「……魔法の武器か。本気、なんだな」
普通の武器は超強力磁石で吸い集めていたが、魔法の武器は内包された魔力が原因で回収できずにいた。
精鋭だけでなくそれなりに腕が立つ者にも与えられた魔法の武器。
それらを振るう兵たちはいっせいにツクルへ襲いかかり――体に武器を突き刺した。
「なら、魔力に作用する吸引器の作成になるのか……磁石の改造もしないとな」
だが、刺した本人はそれにいっさい反応せず自分の世界に入っていた。
刺された武器を通り抜けるようにして、血液を流すこともなくフラフラと歩く。
「ば、化け物……」
誰かがそう言った。
何度武器を突き立てて魔法を放とうと男が止まることはない。
死霊のような動きを以って兵たちが落とした魔法の武器をどこかへ仕舞っている。
ポケットの中に入れているはずなのだが、ポケットの面積を無視して仕舞えていた。
「――そうだ、確か指輪があったな」
ゴソゴソと何かを漁る男、取り出したのは――翡翠色に輝く指輪であった。
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