虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
闘仙 その07
それから実験を繰り返すが戦闘に使える程優れた装置は一つも無かった。
火を熾す“華炎”。
水を生む“泡水”。
風を流す“掃風”。
土を操る“拈土”。
他にも雷を起こすものや空間を操るものがあるが、全て初代【仙王】には通用しなかったので説明は省こう。
あ、名前は全部仙人たちに確認してから付けたのであってオリジナルじゃないぞ。
「――やっぱり、まだまだ改良の余地がありそうですね。ご協力、感謝いたします」
『そう思うのならば何より。では、そろそろ自身の力で闘ってもらおうか』
「……まあ、いいですけど」
使うのは片手サイズの掃除機。
コードレスな上に軽いという主婦の味方になれるような設計にしてある。
訝し気な目を向ける【仙王】だが――次の瞬間、驚嘆の顔を浮かべることになる。
「ポチっとな」ウィーーーーンッ
『! お主、まさか……』
「はい、吸ってますよ――仙丹を」
『なんだとぉおおおゴガガガガァアアア!』
途中から声がおかしくなっているがそれも仕方ないだろう。
今の状況を例えるなら、魔封波をくらった敵キャラみたいに【仙王】はなっている。
あれって、使用者に一定以上の体力がないと死ぬんだぜ。別に魔封波をやっいてるわけじゃないから関係ないが、せっかくなので説明してみました。
「ギブアップしますかー?」
『うぐっ……まだだ、まだ諦めんぞぉお!』
ここで仙人なら魔封波返しでも習得しそうだが、何度も言うが魔封波を使っているわけじゃないから俺がやられることはない。
だいたい、俺じゃなくて吸引力の変わらないただ一つの掃除機が吸っているんだしな。
さぁ、根競べといこうか。
◆ □ ◆ □ ◆
「ねぇ、ローさん」
「どうした、【仙王】よ」
「……今は普通に呼んでもいいんだよ」
「そうはいかん。今のお前は玉座に坐した、正式な【仙王】なのだから」
仙人の住む街『仙郷』、その中央部にある宮殿。そこでは二人の男女が会話を行って時間を潰していた。
少女はその身に合わない玉座の上で、足をぶらぶらと揺らして不服を唱える。その隣で直立した男はそれを一蹴してただ前を向く。
「ツクルは下に行ったんだよね?」
「そうだ。この街の初代【仙王】、あの方が待ち受ける場所にな」
「……アタシは会ったことないんだけど、その人ってどんな人なの?」
【仙王】の就任に特別な儀式は無い。
ある瞬間に最も才を持つ者が就く。
そのため現【仙王】が初代【仙王】に顔を合わせたことはなかった。
だが、『闘仙』は一度ダンジョンに向かうことでその顔を拝んだことがある。
それを覚えていた【仙王】は、『闘仙』に問うた。
そして、『闘仙』は語る――。
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