虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

闘仙 その02



 ダンジョン内で魔道具や装置が使えることは確認済みだ。
 おまけに言えば、すでに霧に含まれていた仙丹と呼ばれるエネルギーも解析に成功している。
 なので街でも結界装置が使えるようになったし、ダンジョンが霧に包まれようと問題ないということだ。

「まさか、老化を抑える効果も含まれているとは思ってもいなかったがな。美肌効果もあるし、貴族の方々に売り捌けば相当な額になりそうだな……そんな知り合いいないけど」

《ギルド長を通じれば可能なのでは?》

「いやいや、そんなことしないって。だいたい、ここの仙丹はこの街のもの。この場所から離れれば効果も消える。外気に僅かに含まれる仙丹を取り込める仙人だからこそ、俺の作った美容液も使えるんじゃないか」

 そう、せっかくだったので美容グッズを作りました。
 お裾分けで【仙王】やリーシーさんに渡したところ、リーシーさんからは好意的な感想が貰えた。
 ただ【仙王】はもともと若いからな、そんな小細工をせずとも充分にプニプニでモチモチな肌である。
 
 ……いや、別に他意はないからな。
 ただリーシーさんが【仙王】と一緒に美容グッズの一つを試している時に、そういった感想を言っていただけだぞ。


「しかしまあ、大きなダンジョンだな」

《ダンジョンということで、空間歪曲反応が確認されております。ドローンで確認した山の立体データよりも、ダンジョンの広さが大きいです》

「さすがファンタジー、それが通常の空間拡張と違うのかは調べておきたいかな」

 ファンタジーの王道、空間属性。
 鞄に使えば荷物が鞄の大きさ以上に入り、移動に使えば一瞬で点と点とを結んで移動できる。
 他にも空間を固定したり荷物を落とすように、空間へ質量を与えて重荷にすることもできるらしいが……今は置いておこう。
 俺が気になるのは──ダンジョンの空間拡張機能が空間魔法系のものなのか、である。

 そもそも、ダンジョンの機能で拡張したのか【仙王】の能力で広げたのか分からない。

「幼子の揺り籠で調べられれば、何も問題なかったんだけどな。さすが、初心者用のダンジョンなだけある」

《制限もトップクラスでしょう》

 そう、いくつかの条件を満たすことで強化されるダンジョン機能。
 幼子の揺り籠は、制限が可能な限り掛けられた縛りプレー用のダンジョンだった!
 ただいま『SEBAS』によってできる限りの解放が行われているが、それならば別のダンジョンからコピペした方が早く済む、というぐらいに作業が複雑らしいのだ。

「まあ、とりあえず進んでみようか――入り口でこう言っていても仕方ないしな」

 これが、ダンジョンに潜る直前のやり取りであった。


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