虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

ヘノプス



 全員が湖に近付いた途端、それは突然目覚めた――

「皆さん、来ます!」

「総員、散開!」

 代表(と俺)の言葉に、精鋭部隊は一斉に湖からバラバラに距離を取る。
 それと同時に湖から何かが浮上して、噴水のように水が降り注いでいく。

「いいかタビビト、あれが――守護獣『ヘノプス』だ」

「……亀、ですか?」

 箱庭らしく、絶滅した動物が守護獣だ。
 背中とお腹の甲羅が繋がっているので、最初は亀だと思ったのだが……よくみると背中の甲羅が手足よりも外側に長く伸びており、形が全体的に平べったかった。
 目のすぐ先に嘴があり、先端が角張っているからか頭は四角形に見える。

 うん、亀じゃ無くて亀擬きだな。

『また来たのか、お主らがこの場所から出ることは禁じられておる』

「それでも、挑む理由がある」

『やれやれ、面倒だな』

 やはりヘノプスとやらも会話ができるようだ。守護獣のオプションだろうか。
 擬きでも亀なので、老人風の嗄れた声で代表と会話をしていた。

『お主は代々伝えられているだろう、ここは神々によって定められた聖域、試練を乗り越えぬ者に移動は許されない……そこの、休人以外はな。コヤツは試練など関係なく、いついかなるときも自由である。故に通ってもよいのだが……どうだ?』

「いえ、どうせ出るならみんなで出た方が楽しいじゃないですか。ところで、試練とはどういった内容で?」

 ……代表さん、試練なんて聞いてないんですけど。
 どこかで聞いたことのあるような設定が盛りたくさん――運営、パクっちゃアカンで!

『本当はいろいろとあったのだが……これまでの『代表』が達成しておる。コヤツらが一つの名を継ぐ理由は、そこにあるのだ』

「……意外と理由があれでしたね」

「だから言わなかったんだよ」

『残すは一つ、儂の魔核を湖に捧げる。つまり儂を倒せという課題だけだ』

 やっぱり、そんな感じだったか。
 討伐と奉納がイコールではないが、ほぼイコールになっているのだから面倒だ。
 貴方の命をくださいと言って、はいそうですかと答えてくれるはずもないし。

「タビビト、本当にやるのか?」

「いい加減にしてください。私だって、非力ながらお手伝いしますよ」

「……フッ、好きにしろ――行くぞ、勝っても負けてもこれが最後だ!」

 代表は握り締めていた槍を構え、精鋭部隊と共に攻撃を始める。
 ヘノプスもまた、巨大な体を用いて迎撃を始めていった。

「さて、俺も俺のやることをしないと」

 俺はポケットから取り出したアイテムを両手に挟み、フィールド上を駆け回った。


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