虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

箱庭


『SEBAS』が戻ってきたので、とりあえず能動的に動くことを決断する。
 葉っぱを鑑定してみたのだが、俺が生産した物では無いためか、ほとんど情報が開示されなかった。

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槍草(仮)

???:???

血が滴っている

(詳細を調べるには鑑定のLvが足りません)

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 俺が適当に決めた名前が、仮として記されている。
 説明文も俺が関わっていたことしか書かれておらず、知れることは皆無だな。

「……まあ、ここが危険だってことはよーく分かったよ」

《旦那様、この空間の空撮が終了しました。四方に雲のような壁が在り、それ以降の場所へは移動できませんでした》

「箱庭、か。とりあえず、全ドローンをその場所で待機モードに」

《承知しました》

 集められた地図を、タブレットで確認しておく……うん、綺麗な箱型だ。
 いわゆる、ゲームのマップみたいな感じだろうか。
 ピッタリ正方形に収まっていて、区画分けも簡単そうだ。

「うーん、とりあえず調査が必要だな」

 色々な魔道具をポケットの中から取り出して、まずは拠点作りを行っていく。



 それから、少しの間この場所で過ごした。
 やはりこの場所、古代世界が今でも残っている……みたいな設定で作られた箱庭だ。
 植物や生き物の一部が、絶滅したとされる物であったから分かった
 そういった情報を『SEBAS』が把握していたのが功を奏した。

「……ただ、絶滅したから名前も適当だったけどさ。なんだよ『ソードリーフ』って、それでいいのかよ『ロングネックドラゴン』って……適当過ぎだろ」

 俺のネーミングセンスもあんまり高くないと分かっているが、特に『ロングネックドラゴン』などという名前を拝命した首長竜が可哀想だなー、なんて思った。

「なので、どうでもいいけどここでそういう名前は無しで。俺が独断で決めます!」

 例えば『ソードリーフ』は剣草、『ロングネックドラゴン』なら首長竜だ。
 え? 日本語表記にしただけ?
 ……だから、予め言っておいたんだろう。


 突然だが、今の状況を説明だ。
 とりあえず箱庭と断定したこの場所、その中央区画にあった火山の近くに家を建てた。
 結界も生成している安心設計なので、何匹襲ってきても大丈夫、な家である。


 その場所から足を延ばし、恐竜や植物の調査を行っていたのが最近のことだ。
 一日に一区画を調査しており、そろそろそれも終わりとなる。

「……今日は、北に行ってみるか」


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