虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

川沿い



 W3

 再び西への冒険を始めた。
 湖の先は川が流れており、俺はそこを伝って移動している。
 あ、別に水の中を歩いているわけじゃなくて、そばにある川沿いを通っての移動だぞ。

 しかし、町が全くと言っても良い程に見当たらないのだが、運営はそういった部分をどう考えているのだろうか。
 確かにこの世界は、冒険アドベンチャーを求めるための場所なのだろうけど、それでもセーブポイントの一つや二つ、普通に置いてやろうよ。

《旦那様。旦那様が死に戻りの装置を造り上げたように、プレイヤーでも技術が向上すれば作成が可能となります。クエストの報酬として出されることもあるそうですので、いずれは普及していくかと》

「え? 知らなかったな。生産ギルドの依頼は諦めないで確認していたんだが……」

 どうやら、その内できるらしい。
 ただ、セーブポイントは古代技術の産物という設定にされているらしいので、素材や技術の観点から、報酬として貰える物以外は入手が難しいそうだ。

「よいしょ、それっ!」

 襲って来た鰐型の魔物に電撃を流し、気絶させて回収する。
 鰐って、野生のヤツは初めて見たな。
 皮を剥いで鞄にでもすればいいのか?

「川に電流でも流せば、一気に大量の素材が手に入る気もするけど……また、生態系のバランス云々で強者に絡まれるのも嫌だしな」

 未だに、巨大な鳥の噂に怯えてます。
 死神の短剣を使い潰せば勝利も見えてくるだろうが、その間に何度死ぬか分かったもんじゃないし、何よりバトル漫画的展開になっても困る。
 巨大な鳥の次はドラゴンか? で、その次もまた強い奴が襲ってくる。
 ――いやいや、ご遠慮願います。

 スローライフ希望の俺は、家族と再会してアイプスルで暮らせればいいと思うんだ。

「そういえば、みんな何やってるのかな?」

 子供たちはそれぞれ主人公のようなことをやっているし、ルリだって新たな宗教を確立させたらしいし。
 なのに俺はと言えば……世界間の戦争を引き起こす原因を生み出しまくってる。

「……合わせる顔が無いや」

 ポーションに貿易、あとは『超越者』絡みの関係か?
 プレイヤーよ、早く俺の立場に成り変わってはくれないだろうか?
 どうせ俺よりも優れた奴らばっかりなんだから、繋ぎぐらいやるからさ。

「ま、とりあえずは安心安全のアイテムだけで進むことにしましょうか」

 過激なアイテムを使わなければ、俺などただのサンドバックくんだ。
 いや、あれはHPがかなりあるから俺はそれ以下か。

 サンドバックにもなれない虚弱さに、一滴の滴が川に落ちたとさ。


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