虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

サボり



「――やあ、久しいな『生者』」

「……ええ、お久しぶりです『騎士王』」

 罪を免罪してもらってから数日、再び面倒事の種と再会した。

「本当にお久しぶりですね、今度正式な場で挨拶を躱し・・たいので、今度連絡するまで待っていてもらえませんか?」

「……私から逃げたいという感情がはっきりと分かるぞ。だが断る! 主人、私にも彼が食べている物を!」

 再会した場所は前と同じ、焼き串屋の前。
 店主は『騎士王』の言うことを聞いてすぐさま肉を焼き始める。

 そして、再び場に結界が張られ、公共の場でありながら閉鎖された空間が生まれた。

「それで、今日は何のようだ?」

「いや、『生者』が森ごと地脈を強奪したという噂を聞いてな。真実を確かめるため、この場に来たのだ」

「……いや、俺はそんなことやってないぞ」

「それは分かっている、お前と地脈が接続されているような気配はない。視れば分かるものだぞ、そういうことは」

「勉強になるな」

 星脈と接続すると【■■■】だとか言う職業に強制的に就くしな、多分それが関係あるのだろう。
 まあ、魔道具による偽装もあるし、普通のプレイヤーぐらいじゃ分からないだろうから別に良いか。

『超越者』は歩く災害だし、一々気にした方が負けだ。

「それじゃあ用件も済んだみたいだな、今すぐガウェインさんに連絡を――」

「いやいやいや、ちょっと待って『生者』。もっとこう、話したいことがあるだろう?」

「いいや、全く。俺としてはもう縁も切ったしそろそろ別れの時間に移行したい」

「そ、そうだ! 他の『超越者』の弱点を教えよう! だから、ちょっと待ってくれ!」

「……仲間を売るなよ。それに、闘うことはないから別に要らん」

 どうせ俺の負けで即終了だ。
 情報を持っていようと、戦闘時に使えないならただのゴミでしかないだろう。

「むぅ、ならどうしたら待ってくれるんだ」

「俺に平穏と安息をくれたらだな」

「任せろ! どうすれば良い?」

「その準備は今やっている」

 手にスイッチを持った俺は――それを押してからそう告げた。

「せ、『生者』……それは一体……」

「もう予想は付いてるんだろ?」

「こ、この気配は! やはり『生者』、連絡していたな!!」

 当然であろう。
 関われば面倒事になるのに、いつまでも一緒に居るわけないじゃないか。

「さて、答え合わせだな。予想通り、俺は既に連絡を取る手段を入手していた。ボタンを押すと、そこに『騎士王』が居ると分かるって寸法だな」

「……くっ、なんと恐ろしいことを」

「ちゃんとした休日であれば、俺もお前を少しは歓迎しよう。……だが、仕事をサボって来たお前を歓迎する気は全くない」

「お、覚えてろよぉおおおおおお!!」


 聖なる騎士らしからぬ、悪党のようなセリフと共に『騎士王』は去っていく。
 ……ハァ、今日も平穏に過ごせなかった。


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