虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
プロローグ
トントントン トントントン
ある昼下がり、軽快なリズムが何処からか聞こえてくる。
それは、ある男が起こしているものだ。
「ふぅ、これで完了かな?」
男が金槌を振るうことを止めると、目の前には小屋が出来上がる。
その出来に満足げな笑みを浮かべ、男は完成した小屋の調子を確かめていった。
そうしていると、一人の少女が男の前に現れる。
優しげな顔立ちで、栗色の髪色を馬の尻尾のように括っていた。
そんな少女は現在、唖然とした表情で、男に詰め寄っている。
「――お父さん、もうできたの!?」
「ふっふっふ。可愛い娘のお願いだからな。お父さん、張り切って作ったぞ」
「だけど……これは大きすぎない?」
「マイは調教師だからな。これからも増えていくペットのことを考えると……これぐらいの大きさの方が良いと思ってな」
少女の目の前にある小屋は、白馬山荘程の大きさを誇っていた(それは、小屋なのだろうかという質問は控えてほしい)。
彼らはれっきとした血の繋がった親子だ。
巨大な小屋の中に関して語り出す父親と、それを聞いて表情筋をヒクヒクとさせる娘。
そんな混沌に染まり出した場所に、もう一人――母であり妻である女性が現れる。
「あらあら、全くアナタは……こんなにデカい物を作って、一体何処に置いておくつもりなの? もう倉庫は満タンになったって言ってたじゃないの」
「あ。…………ま、まぁまぁ、ちゃんと仕舞えるようにしてあるよ。見てくれよ――」
男はそう言って、小屋にある『危険!』と書かれたボタンを押す。
すると、小屋が振動を始め、段々と折り畳まっていくではないか。
「マイが何処にでもペットを連れて行けるように、こうやって仕舞えるようにしたんだ。
お父さん、工夫したぞ」
「またこんな物を……前にもレジャー用だと言って、何でも入る時間が止まったクーラーボックスを作った時、生産ギルドの皆さんに怒られたのを忘れたの?」
「だって、ショウがいっぱい食べたいと言っていたから「何でも子供達の所為にしたらダメでしょ?」……はい、ごめんなさい」
男の作った(時空停止)クーラーボックスの試作品は、生産ギルドの長が直々にやって来て購入交渉をしていった。
――そのクーラーボックスの存在が世に知られれば、生産界に革命が起こってしまうからだ。
夫のしょんぼりとした表情に心を温めながらも、妻は注意を続ける。
「良いですか? アナタも少しは自重してください。こっちでのアナタは、ただのDIY好きではないんですよ」
「そうかな? 俺はいつも、作りたいと思った物しか作ってないぞ」
「そう言って作った物が、何でも切れる包丁だったり、盗難を必ず防止するキーホルダーだったりする人は……普通に収まりませんからね」
「あれらだって……ルリが切れない食材があるっていったから作った包丁と、子供達の為に作った物が盗まれないように用意した防犯アイテムだぞ」
そう言って作った包丁は石でも龍でも切れるような包丁に、キーホルダーは盗賊プレイヤーが敵視するような代物となっている。
「……ハァ。あまり無茶はしないでくださいよ。幾ら死んでも死なない体だからと言っても、痛いものは痛いのでしょ? アナタにだけは、私の魔法も効かないのだから」
「了解、気を付けるよ」
「では、わたしはこれからマイと一緒に、クエストを見に行ってきます。途中でショウも捕まえて一緒にクエストを行います。――ですので、誰もいませんが、強盗には気を付けてくださいね」
「行って来まーす」
「あぁ、気を付けていってらっしゃい……って、この場所に強盗って来るのか?」
男は二人を見送ると、再び金槌を握る。
「……確か、ショウが戦闘力測定器が欲しいと言っていたな……よし、作ってみるか!」
愛するもう一人の子供である息子のため、男は一つのスキルを行使する。
「――:DIY:、スタート!」
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毎日が休日のように、ゆったりとした時間が楽しめるVRMMOだ。
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コメント
ノベルバユーザー601444
表紙に惹かれて読み始めました(^^)
とても読みやすくて続きが気になります!!
ノベルバユーザー598104
主人公の設定が独創的でついつい次が読みたくなります
ノベルバユーザー602526
音から始まるから興味を持ちました。良かった。
ノベルバー姉です
表紙の文字が惹きつけられました。文も読みやすく没頭しました。
ホワイトチョコレート
表紙がインパクトあって、内容も面白かったです。