インフルエンザに囚われたラノベ作家のパパを助けに

御社 欅

第七章 三種の神器

果てしなく続くような螺旋階段だったが、終わりはあっけなかった。

タンと、白い大理石の地面に降り立った。

「まずは、鏡なんだけど。」

「うん。」

「これ。」

え、もう見つかったの。はや。

しかし、これ、と言われた先には、細い通路に沿って、両側に、遥か向こうまで、鏡がズラリと並んでいる。

「....の、どれか。」

えー、で、どれなんだろう。

「何か、特徴は、あるの?」

どれも同じにしか見えない。

「特に...、無いみたい。」

サラが救いを求めるように、鏡を見回したが、私と同じ感想を抱いたようだ。

サラとて、この世界を何でも、知ってるわけではないのか。

「片っ端から割ってみるか。」とエバンズ。

「ダメ。本物も、割れてしまうわ。」とサラ。

こういう時って、何か方法があったような。

「ところで、鏡は何に使うの?」

「お父さまの居場所を映しだすために。」

「じゃあ、それやってみたら。」

「もしもし、鏡よ、鏡さんよ...、あかりのお父さまの御姿を写し給え。」

なんか、もしもしカメよの歌みたいで、この設定、変だよパパ。見つけたら、絶対に突っ込もう。

すると一つの鏡が、パーッと輝いた。

わ、ほんとに?イージー過ぎない?

駆け寄ると、鏡には、

「ハズレ」と文字が、浮き出ていた。

むかっ。鏡を割ってやろうと手に取ると、

「わあ、ごめんなさい、冗談ですぅ〜」

と、文字が流れ、囚われている父の姿を映しだした。

ぜったい、どつく!

いや、もう、放っておいて帰るか。

とは言え、鏡に映る、両手を縛られ、吊るされているパパの姿が憐れなので、仕方ないわね、と踏みとどまる。

「次は、玉ですね。」とエバンズ。

鏡の並ぶ細い通路を抜けると、鍾乳洞になった。

鍾乳石が、あちこちから垂れ下がっている。

壁から飛び出る水晶のような鉱石が、赤や緑、紫に光を放っている。

きれい。

「玉は、何処にあるの?」

「あれです。」

エバンズが、指差したところには、翡翠の色に輝くドラゴンが、体を丸めて眠っている。

四人は、眠っているドラゴンに、少し距離をとって、立ち止まる。

「やっつけるの?」と私。

「やっつけては、いけません。壊れてしまいます。あのドラゴンが、勾玉そのものなのです。」とエバンズ。

「生け捕り?」

と、私が言うと、ドラゴンが、パチリと目を開けた。

グルルルルルと喉の奥を鳴らすと、突然身を起こし、こちらめがけて、緑色の炎を吐いた。

ロドリゴが、盾で受ける。

すると、受けた盾が、石化して水晶になってしまった。

厄介ね。

「あのドラゴンに魔法は効きません。」

じりじりと後ろに下がりながら、距離をとる。

「しかも、倒しちゃ駄目なんだよね。」

「そうです。」

「呪文で、封印とかできないの?」

「出来ません。」とサラ。

じゃあ、どうすれば。

すでに私たちの前は、ドラゴンの炎で、水晶の舞台ができている。

うーん。

水晶になる炎かあ。

....閃いた!

「あの炎、風の魔法は、効くかな?」

「本体には、効きませんが、炎には、効くかもしれません。」とサラ。

やってみる価値は、あるかもしれない。

「サラ、エバンズ、ロドリゴ、あのドラゴンを挑発して、あの炎を全部、私に向かわせて。」

三人は、私の前に並び。

サラは、雷の魔法を、

ロドリゴは、弱めの気合い弾を、

エバンズは、光の矢を作り、

ドラゴンに向けて、次々と放つ。

グルルルルル、ドラゴンは煩わしそうに、左右に首を振ると、こちらへ三歩踏み出し、口を開いた。

来る。

私は、三人の前に飛び出て、呪文を唱える。

「ウインド ブロウ。」

強い風が、こちらに迫る緑色の炎をドラゴンに押し戻す。

グワァァ。緑色の炎にドラゴンが包まれ、まばゆい光が。

そして、ドラゴンは、消えた。

ドラゴンがいた所に、掌にのるくらいの大きさの勾玉を残して。

「次は、刀ね。」

鍾乳洞を抜けると、そこには、石を積み上げて造られた遺跡が目の前に、そびえ立っていた。

入り口の所から、光が入るところまでは、苔に覆われていたが、中は湿った石壁が続いている。

「ひゃっ。」

天井から滴り落ちた水滴が、背筋に入った。

大蜘蛛、大蠍、スケルトン、ミノタウルス。

魔物に時々、遭遇するが、三人は、そんな魔物を瞬殺で撃退。

私も、魔法で、サポートするが、正直、あまり役に立っている気がしない。

右に、左に曲がりながら、扉をいくつも開けてゆく。

もういくつめか忘れた位の扉を開けたところに、その剣は、刺さっていた。

あれだ。

私は、剣に駆け寄ると、引き抜こうと剣のつかに手をかけた。

「あかり!」

サラの叫び声の続きが、消え。私は、真っ暗な空間に立っていた。






「冒険」の人気作品

コメント

コメントを書く