インフルエンザに囚われたラノベ作家のパパを助けに
第四章 出発
狩の館から出発した一行は、まず王様を城にお送りした。
そして、「頼んだぞ。」
という王様の言葉を背に受け城門の外へと旅立った。
街道は、やがて終わり、そこからは先は道が無かった。
一面の草原が、どこまでも広がっている。
馬車から、馬を外し、馬に鞍をつけ荷物を乗せ換え、二匹のコボルトも一頭の馬に乗せた。
私も、馬に跨った。
「ご武運を!」
セバスチャンが、胸に握った拳を当て、立ち姿の敬礼の姿勢のまま、皆を見送った。
この後、セバスチャンは馬車と馬一頭を連れて城に帰るのだ。
セバスチャンが見えなくなると、先頭のエバンズは、馬のスピードを上げた。
走る。走る。
風が耳元でビュンビュン音を立てる。
途中、巨大植物や恐竜並みにでかいオオトカゲが、行く手を阻む。
魔法と剣を駆使し、それらを打ちはらい、先に進む。
「でも、あまり強い敵、いないね。」
この三人が強すぎるという事もあるが、あまりピンチに陥ることが無い。
二匹のコボルトも、小柄なわりに良い動きをしている。
主に相手の撹乱だが。
エバンズが説明する。
「本当に強い、意志を持った者達は、皆、ウィルスとの戦いに参戦しています。この世の良きものも、悪しきものも。」
「そうなんだ。」
「征服する世界が無くなってしまっては、世界征服も出来ませんからね。」
「そうだねえ。」
でも、やっぱり、悪しきものは世界征服したいのね。
パパらしいと思い、くすっと笑った。
「何か嫌なものが、近づいてくる。」
サラが、眉をひそめて呟く。
私にもわかる。
それは、今までのような、危ないというより、もっとおぞましいというのが相応しいもの。
そして、それは現れた。
黒い球体に赤い目が輝き、空中から、こちらを見下ろしている。
しかも、それが100体ほど。
「あれは?」
「ウィルスの斥候でしょうね。」
「え、こんなとこにも、いるの?」
「あの程度の規模なら、もう、どこにいても遭遇する可能性はあります。」とエバンズ。
黒い球体は、ジロジロと五騎に視線を這わせると、急に全体が螺旋状に回転を始めた。
風が起こる。竜巻のようだ。
周りの草が舞いあがる。
「あれは、何?」
風の鎧を纏った所です。
これで、魔法は通りにくくなりました。
剣も迂闊に斬り込むと弾き飛ばされます。
「えーじゃあ、どうすれば。」
「われわれが、キッカケを作ります。あかりさんは、そこに、焔と水の魔法を叩き込んで下さい。」
「サラ、ロドリゴ、行くぞ。」
エバンズが、声をかける。
「下がって!」
サラが叫ぶ。
馬に乗っていて急には、下がれない。
出来るだけ後方に、馬から飛び降りる。
その瞬間、黒曜石の鏃を大きくしたような、先の尖った石のようなものが、黒い球体の方から飛んできた。
エバンズが、身を翻し私の前に立ち剣で、それを叩き落とす。
ロドリゴは、地面に仁王立ちになり、淡々とそれを盾で防いでいた。
サラは?
彼女は、馬のところにいない。
見上げると、空中に逃れたサラは、既に詠唱を始めていた。
「風の精霊、ガ・オーよ、我の前に現れ、ヤ・オー・ガーを開放されんことを、風を凍らせ、時を止めんことを。ここに、乞い願う。」
サラの前に灰色の空間が現れる。
冷気が急速にそこに集まってゆく。
大きな白い熊のような光の印章がその灰色の空間に浮き出て、そこから、黒い球体が作る竜巻に向かって冷気が放たれる。
冷気が竜巻を包み込み、湖を凍らせるようにビシっビシッと音を立てて、凍らせてゆく。
エバンズが、背中に背負っていた大刀を引き抜くと、上空へ飛び上がった。
「一刀両断」
体全体を使って振り上げた大剣が、その柱のてっぺんから付け根まで一気に振り下ろされる。
ロドリゴは、間髪入れず、氷柱に駆けつけると、エバンズが作った凍った柱の隙間に手をいれ、力を込める。
「うおおおおおお。」
なんだ、ちゃんと大きな声も出せるんだ。
サラが口を挟む。
「あかり、今よ。」
「うん、わかった」
「バースト、タイダルウエーブ」
焔が、氷柱に隙間から入り込み中で大爆発。
オレンジ色の光があたり照らす。
怒涛の水が、全てを包み込み、
そして、流し去る。
後には、湿った草原が残るだけ。
やっぱり、この三人半端無く強い。
なのに、私の助けがいるわけ?
多分、最後の魔法も、私が唱えなくても、この程度の効果なら、サラは、自分でカバー出来ていたに違いない。
私の魔法レベルを上げるために、敢えて私に撃たせた気がする。
「あの斥候程度の規模であれば、私達でも充分に対応出来るのですが。」
エバンズが、納得出来なさそうにしていた私を見ながら、話しかける。
「本体は、あまりに...」
その先の言葉が続かなかった。普段、冗舌なエバンズなのに。
今回のこちらの犠牲は、敵の攻撃を避けられなかったコボルト二匹と馬五頭。
蘇生、回復呪文をしっかりかけて、元気になってもらい、出発することにする。
そう言えば、私たちどこに向かっているの?
「もう着きますが、ペガサスの村です。」
馬をまた、走らせる。少し走ると何か見えてきた。
その何かは、緑のもさもさになり、はるか遠くに見えていた緑のもさもさは、森となった。
そして、「頼んだぞ。」
という王様の言葉を背に受け城門の外へと旅立った。
街道は、やがて終わり、そこからは先は道が無かった。
一面の草原が、どこまでも広がっている。
馬車から、馬を外し、馬に鞍をつけ荷物を乗せ換え、二匹のコボルトも一頭の馬に乗せた。
私も、馬に跨った。
「ご武運を!」
セバスチャンが、胸に握った拳を当て、立ち姿の敬礼の姿勢のまま、皆を見送った。
この後、セバスチャンは馬車と馬一頭を連れて城に帰るのだ。
セバスチャンが見えなくなると、先頭のエバンズは、馬のスピードを上げた。
走る。走る。
風が耳元でビュンビュン音を立てる。
途中、巨大植物や恐竜並みにでかいオオトカゲが、行く手を阻む。
魔法と剣を駆使し、それらを打ちはらい、先に進む。
「でも、あまり強い敵、いないね。」
この三人が強すぎるという事もあるが、あまりピンチに陥ることが無い。
二匹のコボルトも、小柄なわりに良い動きをしている。
主に相手の撹乱だが。
エバンズが説明する。
「本当に強い、意志を持った者達は、皆、ウィルスとの戦いに参戦しています。この世の良きものも、悪しきものも。」
「そうなんだ。」
「征服する世界が無くなってしまっては、世界征服も出来ませんからね。」
「そうだねえ。」
でも、やっぱり、悪しきものは世界征服したいのね。
パパらしいと思い、くすっと笑った。
「何か嫌なものが、近づいてくる。」
サラが、眉をひそめて呟く。
私にもわかる。
それは、今までのような、危ないというより、もっとおぞましいというのが相応しいもの。
そして、それは現れた。
黒い球体に赤い目が輝き、空中から、こちらを見下ろしている。
しかも、それが100体ほど。
「あれは?」
「ウィルスの斥候でしょうね。」
「え、こんなとこにも、いるの?」
「あの程度の規模なら、もう、どこにいても遭遇する可能性はあります。」とエバンズ。
黒い球体は、ジロジロと五騎に視線を這わせると、急に全体が螺旋状に回転を始めた。
風が起こる。竜巻のようだ。
周りの草が舞いあがる。
「あれは、何?」
風の鎧を纏った所です。
これで、魔法は通りにくくなりました。
剣も迂闊に斬り込むと弾き飛ばされます。
「えーじゃあ、どうすれば。」
「われわれが、キッカケを作ります。あかりさんは、そこに、焔と水の魔法を叩き込んで下さい。」
「サラ、ロドリゴ、行くぞ。」
エバンズが、声をかける。
「下がって!」
サラが叫ぶ。
馬に乗っていて急には、下がれない。
出来るだけ後方に、馬から飛び降りる。
その瞬間、黒曜石の鏃を大きくしたような、先の尖った石のようなものが、黒い球体の方から飛んできた。
エバンズが、身を翻し私の前に立ち剣で、それを叩き落とす。
ロドリゴは、地面に仁王立ちになり、淡々とそれを盾で防いでいた。
サラは?
彼女は、馬のところにいない。
見上げると、空中に逃れたサラは、既に詠唱を始めていた。
「風の精霊、ガ・オーよ、我の前に現れ、ヤ・オー・ガーを開放されんことを、風を凍らせ、時を止めんことを。ここに、乞い願う。」
サラの前に灰色の空間が現れる。
冷気が急速にそこに集まってゆく。
大きな白い熊のような光の印章がその灰色の空間に浮き出て、そこから、黒い球体が作る竜巻に向かって冷気が放たれる。
冷気が竜巻を包み込み、湖を凍らせるようにビシっビシッと音を立てて、凍らせてゆく。
エバンズが、背中に背負っていた大刀を引き抜くと、上空へ飛び上がった。
「一刀両断」
体全体を使って振り上げた大剣が、その柱のてっぺんから付け根まで一気に振り下ろされる。
ロドリゴは、間髪入れず、氷柱に駆けつけると、エバンズが作った凍った柱の隙間に手をいれ、力を込める。
「うおおおおおお。」
なんだ、ちゃんと大きな声も出せるんだ。
サラが口を挟む。
「あかり、今よ。」
「うん、わかった」
「バースト、タイダルウエーブ」
焔が、氷柱に隙間から入り込み中で大爆発。
オレンジ色の光があたり照らす。
怒涛の水が、全てを包み込み、
そして、流し去る。
後には、湿った草原が残るだけ。
やっぱり、この三人半端無く強い。
なのに、私の助けがいるわけ?
多分、最後の魔法も、私が唱えなくても、この程度の効果なら、サラは、自分でカバー出来ていたに違いない。
私の魔法レベルを上げるために、敢えて私に撃たせた気がする。
「あの斥候程度の規模であれば、私達でも充分に対応出来るのですが。」
エバンズが、納得出来なさそうにしていた私を見ながら、話しかける。
「本体は、あまりに...」
その先の言葉が続かなかった。普段、冗舌なエバンズなのに。
今回のこちらの犠牲は、敵の攻撃を避けられなかったコボルト二匹と馬五頭。
蘇生、回復呪文をしっかりかけて、元気になってもらい、出発することにする。
そう言えば、私たちどこに向かっているの?
「もう着きますが、ペガサスの村です。」
馬をまた、走らせる。少し走ると何か見えてきた。
その何かは、緑のもさもさになり、はるか遠くに見えていた緑のもさもさは、森となった。
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