魔法使いになる方法
〜はじまりはいつも突然だ2〜
「えーっと、ここはどこ?」
    彩那は呟く。図書館で見ていた本は手元には無くなっている。
    大自然に囲まれて自分の身に何が起こってるのか理解しようと頭をフル回転させる。
    だがフル回転させたところで理解出来る訳もなく…
(え?これ、異世界召喚された??!!)
    ラノベにハマっている彩那にはそれしか思いつかなかったのだ。
「キ、キターーーーーー!!!魔法使いになれるぞ〜〜〜!!!」
と、謎の雄叫びを上げた彩那。
    彩那の雄叫びを跳ね返した林の奥から負けじと男の雄叫びが聞こえてきた。
「ちぇすとっっ!!!!」
    その叫び声と共に木が倒される音。自然と彩那の背筋が凍りつく。その声の主であろう人間の足音が聞こえる。
(えっ?人??ち、近づいてる?!)
    木々の倒れる音と男の怒声が彩那に近づいていた。慌てた彩那は近くの小屋へ逃げる。小屋の中に隠れようとした彩那だが余りにも埃だらけで入るのを躊躇った。
(とりあえずこの小屋を盾にすれば…)
    小屋の陰で声の主が来るのを息を潜めて待つ。
「人の声だと思ったが獣か…」
    恐る恐る覗いた先にいたのは、異世界人ではなくボロボロに薄汚れた格好の時代劇に出てくるような若者だった。
(えっと〜、あれ?異世界じゃないの??何かの撮影??でも1人だし…)
    彩那はすぐ側にあった木の棒を握りしめるとその男の前に飛び出した。いくら剣道をしていても無謀としか言い様がなかった。さすが暖かい頭脳の持ち主である。
「何奴?!」
と、男が切りかかるのを半身で避け手に持った木の棒で叩き落とした。
「えーっと、ワタシマイゴ。ココハドコデスカ??」
    相手のピリッとした空気を打ち破る如く、彩那はおかしな日本語で問いかける。
    その男の瞳は全てを憎み恨んでいるかのような悲しい色だった。相手の若者の頭の上に(?)が浮かんだが、害は無いと判断してくれたようで刀を鞘に納めた。
「ここは土佐じゃ。迷子?おかしいじゃろ」
「土佐…土佐犬…?(あ、めっちゃ日本やん!魔法使いになれない?!)はぁ、土佐ですか…」
    こんな状況にも関わらず、まだ異世界だと思っていた彩那はショックを受けていた。
    男は見たこともない衣服に身を包んだ彩那を不思議そうに眺め眉をひそめた。
「お前、名は?」
(名は?あ、名前聞かれたのか!)
    普通に言葉が通じていることを残念がる彩那は、やはりとことん残念な人だった。
「彩那です。原田彩那。」
「さな…か。お前は何でこんなとこ…」
    その男が言い終わる前に彩那は逆に問いかける。
「貴方は誰?名前は?」
「以蔵じゃ!岡田以蔵。足軽の家に生まれた以蔵じゃ、じゃがそのうち郷士、上士と駆け上がる!」
  (身分…?ずいぶん拘るんだなぁ)
    とても呑気な感想である。
    この時代、土佐藩は身分制度が厳しく足軽なぞ農民と同じだった。見たこともない服を来ている彩那は武士の娘だと思われたのだ。
「私、お金も何も無いんですけどどうしたらいいです??」
    以蔵は呆けた顔で彩那を見やった。
(こいつは何を言うとるんじゃ)
と…
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