異世界のバハムート

ロマノフ

第2章 召喚の理由

昔の話だ。
僕が小学校低学年の時、教室で女子が着替えてる中何も知らずに突入したことがあった。あの時の衝撃はまだ鮮明に覚えている。閉め切られた薄暗い教室はただただ眩しかった。その時の僕はただその光景を前に佇んでいた。湧き上がる悲鳴、怒号。投げつけなれる筆記用具、まさに天変地異の花園の中でゆっくりとその光景を、後悔しないように焼き付けていた。

我に帰れば、当たりは騒然としていた。ここはどこの女子トイレかはさておき。さぁ、この状況を打開する作はあるのか?!?
「や、やっべえ。どどどどうしよう。異世界に来たという確信は持てないがこのままじゃ、ブダ箱行きだ!」

次第に人が集まってきた。考えろ、考えろ!思考をこらせ!工夫しろ!案をねじりだせ!
「そうだ!ポケットに!」


ビー!ビー!ビー!
プシャー     警報器がなった。スプリンクラーもだ。火事だ。
女子トイレの人々 「なに?」「水魔法が作動してるから、火事?」「やばっ!逃げなきゃ!」

そう。火事でもなんでもない。天井にも貼られている魔法陣を見れば分かる。さっき、舞が死ぬ時に渡してくれたタバコだ。煙に探知するかは正直博打だったが。
僕はクールを決め込み、異世界の花園から出たのであった。

なんだ?ここは、立派な建物なのは分かるがコンクリートとは思えぬこの外壁。奇妙な文様、大なり小なりの魔法陣があちらこちらにある。それにしてもかなりの人だかりだ。サイレンの音が未だすべての民衆に届ききらないほどの人、人、人。

謎の女の子
「あーーー。ここにいらしたんですね。探しましたよ?」
背後から囁くように、声が聞こえた。振り向いた刹那背中を固く尖ったものが押し付けられた。
(なんだ、、、こいつ)
瞬間にこやかに、
「なぁーんて!冗談ですよ!冒険者さん!登録は済ませましたか?」
あっけに取られた。声の主は金髪のショートボブの背の小さい女の子だった。しかもなんてハレンチな恰好なんだ。あぁ、そっか!ここ異世界だ!
「どうしたんですかー!固まっちゃって!それより、名前!まだ決まってませんよね?赤髪の異端者さん?」
僕の唯一の特徴、髪が赤みがかっているのだ。日に当たりすぎる生活をしていたせいか、染めたように赤いのだ。
「それより異世界からの来たことを知ってるのか?」
「ええ!そりゃぁもう。その見たことの無い煙が出ている筒、その服装。見れば異端者って事は分かりますよーう。」
「んぁー!わかった!それで?その異端者っていう偏見じみた言い方はなんとかならないのか?俺は、、、お、俺は、。」
「名前を思い出してるんですか?無理ですね。それはこの世界に来たら貴方はこの世界での名前を決めなければならないのです!」
なるほど。そういう事かうーん。名前以外のことは大抵思い出せるな。
「納得しましたか?私の名前はシーナ。さぁさ、神官様の所へ行きましょう!」
まだ何も納得してねぇよ。なにが目的だ?このアマ。

「あ、そうだ。異端者さんちょっと私、飲み物買ってくるので、そこで待っていてください!すぐ戻りますので!」
「あ、ああ。わかった。」
ふぅー。いい時間が出来た。まずは状況整理だな。俺は交通事故で死に、そしてこの世界の女子トイレに召喚された。シーナの反応を見る限り異端者、つまり俺のように異世界から来た人も多いみたいだ。周りを見渡せば、魚のようなエラやヒレを持つ魚人族?体格が明らかに違うな、巨人族か?それと鬼か悪魔か頭に角が生え、壁に座り込んで泣いてる子供、、、。

「どうしたの?」
謎の幼女 「ぐすっ、お父さんとお母さん死んじゃった。」

どうやら推測だけど、この子も死んだのだろう。この世界にくる条件は元の世界での死、だろう。

「そっか。お兄ちゃんもさ、さっき急にここに来ちゃってさ。君もそうだろ?さぁ、そんなに泣かないで!これあげるから!ほい!さっき買ったカルパス!」
「お兄ちゃんもなの?あ、ありがとう。ぐすん。」
「さぁお味はどうだい?」
「なにこれ!?うっまーーーい!」
「だろー?お酒がなくてもうまいんだぞ!こいつは!」
「ありがとうお兄ちゃん!」
シーナ「なぁに誘拐しようとしてるんですか?」
「してねぇよ。バカ!」
謎の幼女「私シズク!さっき知らない女の人に名前つけてもらったのー!」

シーナ「この子、ひとりだったの?」
「そうみたいだ。そこで泣いてたからな。置いていかれたんじゃないか?」
シズク「おい!そこの赤毛!もっとないのか?カルパム!」
「カルパムじゃないよ!ってか、切り替え早!さっきまでのいい子ちゃんはどこに行ったんだ?もしやこいつ賢い子なのかぁ?」
シーナ「さぁさ!あなたも早く名前付けてもらいに行きますよ!シズクちゃんも一緒にくる?」
シズク「うん!いいのか!?ありがとうおばさん!」
シーナ「ぬっく!お、おばさん。。。」
「こいつは骨が折れそうだな。ぷふふ」

シーナに連れられ広い大聖堂に連れてこられた。
シーナ「着きましたよ!異端者さん!ここで名前を付けてもらってください!」
「付けてもらうって、誰もいないじゃないか。」
「何言ってるんですか?したをご覧なさい!そこの魔法陣に入ればいいんですよ!」
あぁ、これか。
瞬間当たりは闇に包まれた。視界にもやがかかる。意識が遠のいて行くのを感じる。
気がつけば。当たりは闇の中、1人でポツンと浮いているようだ。あとは椅子がひとつだけ。
「はぁー。気分悪い。魔法陣になれるのにはだいぶかかりそうだなぁ。転送とかで使いそうだし、まぁMMOには必須だがな。っよっこいしょ!」
ドスン。
椅子で待ってろってことだろう。
「しかしいい椅子だな。」



女神「ちょっと」
「ん?」
女神「ちょっとなにしてるのよ。ん?じゃないわよ。」
なにやら神々しい女神の登場だ。
女神「あたしの椅子なんだけど。」
やべ。怒ってるな。
「あー!すみません。そうとは知らず、これは失敬。」

ぶすっとした顔で座椅子を手で払い、優雅に座った。
女神「して、何のようですか?」
「いや、なん用ってここは名前付ける場所じゃないんですか?女神様」
女神「ああ。その要件か。ならばもう既に決めておる。」
「ほうほう。して、名前は?」
女神「貴様の名は。えーと。」

女神は辞書の方に分厚い本を取り出した。
女神「む?」
「どうなされたのですか?」
女神「本日召喚される予定のものはすでに登録済みだ」
「ほえ?」
女神「貴様、」

言い終えたと同時に凄いスピードで僕の首を片手で締め、空にぶら下げた。

女神「貴様に、与える名なぞないわ。どこからきた?誰の指図だ?」
「くっ、、がぁっ!」
凄い力だ、近くに来れば分かる。体格は人間じゃない。2メートルはゆうに超えている。
僕も抵抗を始めた。女神の片腕に足を絡ませ、関節とは逆の方向に全力で体を捩らせた。
だがビクともしない。
「ぼ、僕はなにも知らない!死んだと思ったらこの世界にいたんだ!」

女神が力を緩め、僕を地面に叩きつけた。
「ほぅ?なれば、イレギュラーと言うものだな。しかし、お前いい目をしておる。気に入ったぞ。」

「かはっ、ゴホッ。う、うう」
喉が変形しているような錯覚をした。それ程の力で絞められた言は今までなかった。

女神「私自らその名を与えよう。しかし。貴様にはちと協力してもらいたいことがある故、それはまたおいおい学ぶであろう。」

女神「汝に名を指ししめす。汝その言霊においてかの世界から召喚を許す。戒めの名をここに、傀儡となりて顕現せよ。」

難しく、飾られた言葉で魔法が唱えられた。
僕に与えられた言葉、名前それは、ーーーー

ーーー遠く海の果て、、オケアノス。




シーナ「オケアノス?それは名前じゃなくて眷属の印よ!」

「らしいな。なんでもこの世界の神様だとか、その眷属の名を与えられるって事は名前と別で、結構名誉な事だとか。」

シーナ「また変な奴に目をつけられたわね!最近は神様達も何やら不穏な噂を耳にするんだけど。」

「そうなのか。あと、特別に生前の名前を教えて貰ったよ。僕はカエデ。そういう名前だ。」

シーナ「カエデねぇ。なんだか可愛らしい名前なんじゃないですか?」

カエデ「美しいといえ!美しいと!それより、お前はなんで俺を探してたんだ?」

シーナ「決まってるじゃない。冒険よ!その為のパーティを今作ってるじゃないの」

カエデ「はぁー?なるほど。おめぇ。友達とか居ねぇな?」

シーナ「うるさいなぁ。まぁあなた達もこのままじゃ野垂れ死ぬか、ケモノの餌になるところだったんだから。」

シズク「おーい。カルパスぅー。カルパスぅ。」

カエデ「シズクに至っては餌付けしたようなもんだけどな。いいのか?シズク。俺たちに付いてきて。」

シズク「うーん、仕方ないなー。」

シーナ、カエデ「なんて偉そうな子」

シーナ「まぁ今回はパーティ創設記念と言うことで!パァーっと行きましょ!パァーっと!」

カエデ「おお?いいねぇ。羽振りのいい女は嫌いじゃないぜぇ?おい!シズク!カルパス喰えるぞ!カルパス!」

シズク「ほわわー!おばさんありがとうー!」

シーナ「だからおばさんはやめなさいって!、、、あれ?」

カエデ「どうしたんだよ。」

シーナ「財布。失くしちゃった」

カエデ、シズク「おおおおおおおいいいいいいい!」

続く

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