異世界賢者は世界を弄ぶ
稔憲の好物はきつねうどん
午前中は稔憲と隆文は稔憲の部屋でまったりしつつ、話し込んでいた。隆文はスマホを弄ったりするのも忘れない。
移転門から伝書鳩が飛んできて「ヘブンズにお越しください」と伝えたのに対し、「明日行くと言っているだろう」と稔憲が返す。まったくなんだと思っているのだ、あちらの神々は。稔憲は毒つきたくなる。おそらく、魔法が無いと不便な稔憲が自分の意志でヘブンズを選ぶようにしたつもりだったのだろう。偶然、ご飯の美味い日本に転生しなければ、意気揚々と戻っていたかもしれないのも事実だ。
巡りあわせとはかくも面白い。そんなことを言うから周囲に「じじむさい」と言われることも知っている。が、事実だ。そして精神年齢千歳越えを舐めるなと言いたくなる。
「行かんでいいの?」
「どうせ明日行く。それからで遅くない」
地球のルーン文字と合わせて新しい魔術を開発していく。やはりこういうのが楽しい。
「毎回思うけどさ、あっちに行くと味噌と醤油って高値で売れるよな」
「仕方あるまい。あちらの調味料が少なすぎる。あれを知ってしまえば、戻れぬよ。あとはこちらで言う宝石か。魔力を通さない石というのは珍しいからな」
一部マニアにだが。調味料関係は上流階級から庶民層にまで幅広い。それゆえ、色々な所から買い取ってヘブンズに持っていく。そして、売れた金でこちらで販売するものを買ってくることもある。転売屋になった気分だが、双方に「適正価格」で販売している上に、調味料は作る方法を教えている真っ最中だ。その調味料が終わったら、次の調味料を考えている。
「あっちの石、綺麗なのに」
「どちらも珍しい物好きだということだ」
「そういや、稔憲も昔電池で動く玩具に興味津々だったよな」
「うむ。あの電池が魔石かと思ったのだ」
現在は違うと分かっているが。電池を触って破壊させ、幼稚園教諭たちを阿鼻叫喚の地獄に晒した。そして、思いっきり両親に怒られたことまで一瞬にして思い出してしまった。
それほど危険なものだとは思いもしなかったのだ。
「午後から弁当作り始めるけど、昼飯は何がいい?」
「きつねうどんを」
「……稔憲ぃ」
「仕方あるまい。コンビニのきつねうどんは不味い」
しっかりと隆文に餌付けされた稔憲だった。
そのあともしつこく届く伝書鳩に嫌気がさしたのは、隆文とアレックスで。「さっさと行ってきてください。お土産楽しみにしています」と言ったのは蒼で。
渋々と扉を開いたのはその日の夜だった。
そんなわけで、稔憲は半年ぶりにヘブンズの天界に立ち寄った。
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