異世界賢者は世界を弄ぶ

神無乃愛

異母弟は見捨てる


 戻ってきてすぐ、稔憲は冥界神との話をそのまま弟子たちに伝えた。
「兄上の性格を考えると早急に助け出さないと」
 ガザエルの言葉に、すべてが要約されていた。どうやら稔憲の懸念は見事に当たっていたようである。
「というわけで隆文、急ぐぞ」
「ほいよ。で、どうやって助けるんだ?」
 いくつか方法はある。一つは、流れの術者と剣士を装う方法。それを国の上層部が信用するかが問題である。もう一つは、問答無用でここに連れてくること。手っ取り早いが、相手に信じて貰えるかが不明だ。あとはのんびり旅に出てから合流する方法。あっさりと思いつくだけでも、これくらいはある。
「……どうしてものかな」
「考えていなかったんかい」
「うむ。地球出身だと言ったところで、信じて貰えそうもない」

「御師様」
 でかいため息をついたフラウが、マジックバックとヘブンズの人間に見えるための変装道具を隆文に手渡していた。
「そこまで気に病む必要はありません。あのままお馬鹿だとしたら、考えるまでもなくおだてればいいだけです。少しだけ賢くなったのだとしたら、流浪の術師と剣士に罪を擦り付けます」
「?」
「冥界神を『魔王』と称して倒すのでしょう? だとしたら、召喚された女性と流浪の術師がうまい具合に冥界神を倒したところを見計らい、罪を被せてしまうはずです。『冥界神を殺めるという計画を聞き、慌てて止めに入ったものの遅かった。せめてと思い、冥界神を殺めた者を我が手で討ち取った』とでも吹聴してもおかしくありませんよ」
「……それに誤魔化される馬鹿な国があるとでも?」
「御師様、あなたの基準で考えないでください。というか、一般的な基準で考えないでください。それが出来るのなら、最初から御師様すら放棄した召喚式を使って異世界人を呼び出そうなどと考えませんよ」
 フラウの言葉に、ガザエルは微妙そうな顔をしていた。異母とはいえ、兄だ。元部下にここまでこき下ろされるというのも、如何なものなのか。
「……事実だから何も言えませんよ。こちらでもさり気なく補助は致しますから、大御師様はご存分に暴れてください」

 その言葉を受け、隆文の変装を待って移転陣を起動した。

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