転生して邪神になったのでとりま世界滅ぼします

白猫ゼロ

30話 初めてのクエストその四

~テュフォンちゃん視点~


「おーい、みんな起きろー!」


朝7時に起きた(起こされた)テュフォンは「んー!」と背伸びをして起き上がる。
声の主はリアスの友達のルナ、だが肝心のあの人が居ない....


「ルナさんかずとさんは何処に?」


私が聞くよりも早くダフネが質問する。


「あー、かずとなら朝早いクエストだからすぐに出てっちゃったよ」


「そうなんですか...」


「そんなことよりリアスは置いといて君らもクエストだろ?朝ご飯は出来てるからすぐに食べな〜」


のそのそと起きて七人でテーブルの椅子に着く。テーブルにはかずとのであろう置き手紙が貼りつけてあった。

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みんなへ

先に木こりの手伝いクエストで既に出ています。朝ご飯、昼ご飯は各自に渡したお金を使って食べてくれ、夕飯の時間は一緒に向かいのレストランに行こうと思う。
それじゃみんな頑張って

                                                            かずとより
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もう聞いたわ、という理不尽なツッコミを心の中でする。


朝ご飯を食べたらみなそろそろ出なければいけない時間になったようで、すぐにバラバラになった。

商人の手伝いかぁ...あんまり商売は漉きじゃないんだよね、でも私のスキルを活かせそうなクエストはこれしか無さそうだし...

そんなことを思いながら金髪の少女は指定された場所に向かう。


「ここか...あんまり大きくないわね」


「結構ストレートに言うねぇ〜お嬢ちゃん」


「い、いやその...ごめんなさい!」


何やってるの私!?ついつい思ったことが口に出ちゃう。
うう...それでお母さんにさんざん怒られたなぁ...ってダメダメ!お母さんのことはキッパリ忘れる!そう決めたじゃないの私!


「ん?どうしたお嬢ちゃん?そんな気にしてないから俯かなくていいんだよ、まぁちょっと傷ついたのは事実だけど...そんなことより早速作業やってもらうから入った入った」


気にしてんだか気にしてないんだかはっきりしろ!とツッコミを入れたくなったがどんなことをするのか気になって仕方がなかった。
この世界の商売は基本昔からずっと変わらず売却者と購入者による値段交渉で値段を決める。
値段交渉ならスキル『究極交渉術』で多分価格そのままで決着できる自信がある、というかむしろそれが狙いでこのクエストを受けたのだ。
しかし彼女の期待は大きく外れる結果となった。


「んじゃそこの品物札に書いてある順に並べてくんない?」


「え...値段交渉は...」


「そんなの嬢ちゃんにはまだ早いよ〜」


本当は自分のステータスを見せてやりたかったが生憎ここで自分が魔族のしかも七つの大罪の一人だとは知られる訳には行かなかった。
しぶしぶ品物を並べるがこれでは結局このクエストにして意味は無くなってしまう。
現在時刻は午前9時、開店は9時半。それまでに何とか品物を並べ終わったテュフォンはその次の指示を貰って盗難防止の見張りと納品チェックを任せられた。
にしてもボロい、小規模だから仕方ないと言っても品物を並べる箱も入れる度にギシギシなっていて、体重を掛ければ簡単にバキッといってしまいそうだ。
床やカウンターは埃まみれで衛生上問題があるかのようにも見える。
掃除用の器具がないことから掃除をサボってる訳でなく相当な金欠だということが理解出来た。
その事は従業員が奥にも依頼主を除いて誰も居ないことからも伺える。さすがにいくら小規模といっても納品から商品管理、商品並べに会計など一人では到底無理なのだ。
だが、掃除道具も買えないようじゃ従業員が雇えるはずもない。そこでギルドにお願いして、手伝いクエストとして登録してもらったのだろう。経済的状況が危機にある場合ギルドから駆け出し冒険者を雇えば値段もかなり抑えられる。
しかし、そんな金欠状態とは裏腹に客自体は来ている。いやむしろ少しレジのカウンターに行列が出来ているほどだ。
きっといい商品を仕入れていてそれなりに需要もあり、どうして掃除道具を買えないほど金欠なのか少女には理解できなかった。
だが、それはレジで値段交渉を少し盗み聞きしたらすぐに分かった。


「オランゲ銀貨1枚」


「えー旦那ぁちょっと高いよ〜だいたいそれ銅貨5枚が妥当でしょ」


「え、でも...うちに置いてある品物はだいたい高級なものなのだが...」


「まぁ、そこは少しまけてくだせい!」


「そ、そうかじゃあ仕方ないな、銅貨5枚で売った!」


少し唖然とした。これは交渉と呼んでいいのか疑う程だ。本来今の品物は銅貨8枚が仕入れ値だ。定価にすれば銀貨1枚でもまだ安い方だ。
案の定その品物を安値で買った青年は少女の隣を通り過ぎる時に「へへっ、相変わらずちょろいぜ」と言っていたのをしっかり聞いている。
恐らく不景気はこれが原因だろう、客の要望とまったく同じ値段で売るなんてほとんどありえないことだ。
しかも話を聞いたり様子を見る限り客のほとんど、少なくとも常連客の全員はこれが狙いで通っているようだ。中には明らかに仕入れ値より安い価格で買っていたものもあった。

よくまぁこれで人にまだ早いなんて言えたものだと虫唾が走った。

そんなことが2時間ぐらい続いたあと昼休みになった。


「さーてお嬢ちゃんお疲れ様、弁当あるから食いな」


「あ、ありがとうございます」


「いやぁ、なかなか大変でしょこの仕事?」


この人はいい人だ、いい人なのだが単純すぎる。私が言えたことじゃないが...
この人には悪いかもしれないだけど言うしかない、言わないと後で私は後悔するだろう、このままだと店は確実に潰れる。午前の仕入れ値を抜いた売上は結局50人の接客で銀貨3枚だ。

依頼主が言っている通りこの仕事は楽とは言い難いのは事実。私がやっている仕事も一人でやるとなったら1ヶ月かそこいらで過労死しかねない。

そして少女は勇気を振り絞って言う。


「あ、あの...」


「ん?なんだいお嬢ちゃん?」


「私がこう言う権利はあんまりないのかもだけど、さっきの値段交渉、あれじゃあ利益なんてほとんど上がらないと思う...」


「まぁ...そうなんだよなぁ、結構君みたいにこのクエスト受けた冒険者がたまに同じこと言ってるんだけどねぇ...なかなか治んないんだよ」


いいや違うこの人は治んないんじゃない、治す気がないんだ。彼女はそう確信した。
それほど優しい人なんだろう、朝の私の失言だって下手したらギルドに訴えられかねないほどの無礼千万の発言だ。
それをこの依頼主は易易と流していたせいで大したことじゃないと思っていたが、発言自体は大問題。この人が優し過ぎるのだ。
優しさが裏目に出てしまう悲しい状況がこれだ。商売に熱愛的に精通していた彼女の母は彼女に商売の何たるかを魔法と同じぐらい幼い頃から徹底的に叩き込まれた。そのおかげで『究極交渉術』というスキルも手に入れた。
だが、母の言葉を借りるならばこれは『商売に優しさを求めたものから堕落していく』というものにピッタリ当てはまるだろう。
さすがに正面向かって「あんたは商売に向いてない」なんて言えるほど彼女も非常識ではなかった。
だけどここで黙って見過ごせるほど彼女は店に無関心な仕事人ではない。


「優しさだけでやっていこうなんて商売で通用する訳ないですよ」


キッパリとした発言に依頼主はムッとニコニコした表情が変わり真面目な顔になった。


「お嬢ちゃんに商売のなにが分かるんだい」


「やったことはないけど分かるよ、お母さんが毎日商売してるのを私はずっと見てきた。
優しさも人としては大切、でもそんな優しさという武器を逆に利用されたら元も子もない、『商売人にとって値段交渉は戦争』あなたも商売人なら聞いたことぐらいあるでしょ?悪いけど私にはあなたがそんな覚悟で挑んでるようには到底思えない」


「.......じゃあどうしろってんだい、優しさを失くしたら客が来ねぇ、優しさを活かしたら客が来ても儲からねぇ」


「午後の交渉役、私に任せてくれない?生意気だとお思うだろうけどお手本を見せてあげるわ」


値段交渉だけは誰にも負けない自信がある。変装して、たまに母と私は魔族のみんなには内緒でよく人間界に行き、商売をしていた。母の代わりに値段交渉をやっていたぐらいなのだからこの程度造作もない。


「お嬢ちゃんは優しさを失くして商売が出来るのかい?俺には辛くてできないさ」


「なにもゼロにするなんて言ってないわ、何事もバランスよ」

かなり大口叩いているが実際この少女にはそれなりの経験も実績も実力もある。


「んじゃ、お嬢ちゃんに任せてみるか」


~午後~

「ねぇこれ銅貨4枚でいいよねぇ?」


「定価どころか原価すら上回ってないで売れません」


「いや...でもその...」


「あなたはこの店に潰れろとでも言いたいんですか?」


「いや...そのそんなつもりでは...」


「では銀貨2枚払えない場合はお帰りください」


「わーかった!分かった!払うよ、銀貨2枚!」


渋々銀貨2枚を払い、「チッ」と舌打ちをして帰って行った。


依頼主はオドオドしてこちらをチラチラ見ながら作業をしている。
だが、少女のやや傲慢というか傲慢な値段交渉は続いく。


「はい!?ちょっとお嬢ちゃん!!銀貨5枚ってどうゆうことよ!?前は銀貨1枚でこれ買えたんだけど!?」


ちなみに常連と思われる舐めた額を最初に出てきた奴は徹底的に値段を釣り上げている。さすがにここでいたたまれないので買わずにはいられない。


「どっかの誰か様方のおかげで赤字なので値上がりしました」


皮肉たっぷりに笑顔で返答する。この常連はどうせ安く済むと思ったのだろう、全くの計算外の自体に金がないからまけてくれと言い出す始末。無論そんなのは少女には通用せず


「銀貨3枚ですか、無理ですね」


「い、いやでも結構な値段なはず...」


「お客様なにか勘違いしてるようですがここは安値の雑貨店とは違い比較的高い品物を取り扱っております。ご予算は金貨1枚が妥当ですよ」


「....分かった、銀貨5枚」


渋々銀貨5枚をカウンターに置き「チクショオオオオ!!俺の小遣い半分無くなっちまったじゃねーか!」
と言いながら帰って行く。
ちなみにそれでも買っていくのはスキル『究極交渉術』のおかげだ。恐らく彼女から言わせてもらえば「ざまあ見ろ」の一言だろう。
そんなこんなで本日のクエスト終了時刻ぐらいまで半鬼畜なぼったりは続いた。


夕焼けが照らされそろそろ店閉めの時間帯になってきた頃彼女よりもさらに小さい一人の少年が来た。


「アロマセラピーの花を下さい」


「銀貨4枚です」

少年は財布を取り出して愕然とする、銀貨3枚...あと1枚足りない。少年は俯いてヒックヒックと泣き出す。


「あと1枚なのに...ないよないよグスン、せっかくお母さんの病院治ると思ったのにヒック」


「どれちょっと財布貸して見なさい」

カウンターから少年の財布を取る。そして1、2、3、と数えていきそして幻の4枚目を数える。


「え?...確かに3枚あったのに...」


「んーそうかなぁ?私はちゃんと4枚数えたけどなぁ」

と言いながら銀貨3枚を財布から取り、少年に花を渡す。


「お母さん待ってるわよ、早く行ってあげなさい」


「...姉ちゃん、ありがとう!!」


とまた泣きながら花を大事そうに持ち、そのまま疾走した。


「なぁんだ、優しいとこもあんじゃねぇかお嬢ちゃん」


「言ったじゃない、優しさが別にゼロな訳じゃないって」


「でもあれだけぼったくったら常連とか客はほとんど来ないよ〜」


「いいのよあんな奴ら来ない方がむしろ利益だわ」


「またまた〜まぁスカッとしたよ」


「ちなみに利益は白金か1枚と金貨3枚分よ」


「うひゃあそれ、おじさんの年収といい勝負だよ〜」


「あと2日あるからあなたも私みたいに強気に交渉出来るようにしてよね」


「おう!師匠!」


日が沈む時間にエルフの少女とおじさんが大笑いしているほのぼのした光景がそこにはあった。


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残りの2日、テュフォンの交渉無双によって店の売上は急上昇、無論客は減ったが需要は高い。
最終日にうちで働いてくれと言われたが、さすがに断った。
その後テュフォンは交渉天才少女として街で噂されるのだった。



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どうでしょう?初めてのテュフォンちゃん視点。いやぁ、さすがにサブっちゃサブだしサブだけど少しは輝いて貰わないとね。あ、ちなみに次はベルちゃん回にするつもりです( -`ω-)b


???「だ〜れ〜が〜サブだって〜?」


作者(あ、オワタ)

Ω\ζ°)チーン


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