ダンジョンを現役冒険者パーティーで経営、そして冒険者から金品+命を奪うのはアリですか?

ゴッティー

第7話 今後の目標

 朝方。昨日、ダンジョンボス攻略をしたためその疲労が今日になって出始めている。しかし、先ほど回復ポーションを一本飲んだため琥珀の体はいつもの調子へと戻っていた。

「おおー! やっと来たか、琥珀!」

 『フレッシュガーデン』というエルドの大通りから少し離れたカフェへエレガたちに誘われた琥珀。このカフェの朝食メニューはとても評判がいいらしい。待ち合わせ通り、カフェの前に設置された小さな噴水の近くへ行くと、そこにはエレガを含むパーティーメンバー4人の姿があった。

「遅いわよ? もう5分も待ったわよ」

 エルクとエレガに呼ばれ、琥珀は彼らの近くへ行くと、ふと琥珀はデジャブのような感覚に襲われた。この5分待たせたことをわざわざ言われる感じ、琥珀の暗殺依頼提供者の役目を務めていたヨミスとの毎月の待ち合わせを思い出させられる。しかし彼との待ち合わせより断然賑やかであり、待ち合わせに行くことに少々喜びを感じる。暗殺依頼提供者である仕事仲間と待ち合わせをするのと自分が信頼しているパーティーメンバーとの待ち合わせでは全てが違い、安心感や幸福感も違う。しかしやはり誘われた側が5分遅れて待ち合わせに登場するというのは常識だと思うのだが、それを言っても仕方がない。そもそも冒険者や暗殺者という職業は常に常識外なのだから。

「たったの5分だがな」

「まあいいわ、さっさと行くわよ?」

「おはようございます…」

 最初で最後に琥珀に挨拶をしたのはメルだった。メルはほぼ毎回、琥珀と会話をする時や挨拶をする時には何故かもじもじと落ち着かない様子だ。時々、自分と喋りにくいのかと思った時もあるが、もじもじとしながらもよく喋りかけられることからしてそれが理由では無いようだ。

 それはともかく5人は店内に入るとウェイトレスに案内され窓際へと誘導された。

「ご注文はお決まりでしょうか?」

「私はこのモーニングセットAで」

「俺はステーキ&サラダとご飯大盛りで」

「私はサンドイッチとチャイティーでお願いします…」

「俺はサラダ大盛りを2個」

 見事に全員、メニューからバラバラのものを頼んだ。しかしウェイトレスは何一つ困った顔もせずスラスラとメモ用紙に注文を書きあげていく。流石に全て違うものを注文するのは可哀想だ。そして琥珀は4人の注文したものの中から一つ注文した。

「俺はサンドイッチとチャイティーで」

 そしてウェイトレスは店奥へ下がっていった。

「エルク、朝からそんなに量を多いものを注文して大丈夫なの? 戦闘に支障が出ないようにだけはしてよね!?」

「朝から量のあるものを注文しなくて何を選べと言うんだ?」

「だから私達の注文したようにモーニングセットAやサンドイッチみたいなすぐに消化されそうな食べ物を選びなさいよ」

「すぐに消化されてはダンジョンで腹が減ってたまらないであろう?」

「は~。もういいわ。朝食のせいで私達の足を引っ張らないようにだけは気を付けなさいよね?」

 と、そこでディアブルが話を遮った。

「話の途中、悪いのだが…。そろそろダンジョンで今日、何をするべきなのかを話し合いたいのだが…」

「そうね…。まず今日、一番に私達がするべきことは昨日手に入れた武器を試すことね!」

 そこで4人はエレガに頷いた。

「で、もう一つは琥珀の武器。今日中にその能力を調べるのは難しそうね」

「そうだな。俺の考えでは俺達の武器を試すのは地下6か7階が適しているように思う。理由はあの階の魔物は攻撃方法が単純で体力が多い。そのため的として適していると思うのだが」

「そうね。私達の武器はそれで足りるかもしれないけれど、問題は琥珀の武器ね。その武器にかなり高い能力や特殊能力なんてものが付いているのであれば他の冒険者たちには見せられないわ」

「確かに琥珀の獲た短剣は能力がどうであれ他の者に見られては何かしら不都合だろう。短剣目的で冒険者たちから狙われる可能性も出てくる。やはりまだ他の冒険者たちの辿り着けていない11階か12階で試すのが理想的というわけか…」

「…ディアブル!…ちょっと声...大きいわよ…!」

「…ああ…すまない….」

 今の声は確実に隣の席まで聞こえていたとは思うが、彼らが冒険者でないことを願おう。もし彼らが冒険者なのであれば少なからず噂がこの町で広がるだろう。

「それで提案なんだが、今日一日俺達が地下6、7階で各自の武器を試す。そして明日から琥珀の短剣を時間を掛けて試し、調べるというのはどうだろうか?」

「「「賛成」」」

「琥珀、お前もそれで大丈夫か?」

「ああ。問題無い。今日一日で武器能力を全て調べられるとは俺も思ってはいない」

「琥珀。ありがとう。では今日一日俺達の武器を試させてもらう」

「「「「了解!」」」」

 5人全員の一致。ディアブルはパーティーメンバー全員から自分の提案の了解を貰い、今日一日は地下6、7階でひたすら狩りをすることが決まった。

「ところで昨日、エレガに紹介してもらった武器屋へ早速行ってきたんだが…」

「あっ、そうなの? で、何か良いアイテムは見つかった?」

「いや、武器もアイテムも買っていないが、昨日俺はグリードにこの短剣の武器能力鑑定をしてもらった。それでどうやらこの武器には『裂』の能力以外にもう一つ能力があったようだ。能力は耐久値無限」

「耐久値無限だと? 一体それはどういうものなのだ?」

「そのままの意味だ。どの武器も必ず長期間に渡って使われるといつかは折れて使えなくなる。それにそれを使うにつれ杖なら魔力の通りが悪く。剣や槍など相手に直接当てる武器は精密さや切れ味が失われる」

「ああ.........。」

 ディアブルは一瞬深く考えると顔を勢いよく上げた。

「もしかして武器が一切鈍らないということか?」

「その通り。その上、刃先が曲がり削れ、鈍くなるということも無い」

 と琥珀が言うと、ようやくエレガ、エルクとメルが理解したようだ。

「それって一生、武器に困らないってことじゃない!」

「ああ。その通りだ」

「その通りだって…。それだけでも凄い能力なのに『裂』っている不明の能力も付いているなんて…」

「まあ、想定外の能力が他にもあることが判ったわけだが、今後の方針は今話した通りだ」

 ディアブルがカフェカウンターをちらりと見た。そこにはもう琥珀たちの朝食の用意が出来ている。運ばれてくるのはもうすぐだろう。

「では、琥珀、新しい情報提供に感謝する。そして今からはこの話を辞めるとしよう。他の冒険者に聞かれてはまずいからな」

「「「「「了解!」」」」

 そしてウェイトレス二人が5人分の料理を運んできた。5人の会話はもうこのカフェの料理の話題に変わっており先程の真剣な話をしていたとは思えないほどの切り替えの良さ。そういえば4人が地下6、7階で狩りをしている間自分は何をしていればいいのだろうか…? と、思ったが自分が暗殺者だった時から今まで愛用してきた短剣を使えばいいか。そうしてこのパーティーの目標は決まったのだった。

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