【打ち切り】Rank.0にして最強につき

Aksara:q

第5話 クァルプギスは面倒事




 俺を怒らせた二人は反省の色を見せたから説教から解放してやった。
 つうか一時間分キッチリ絞ってやったんだからこれで反省してなかったら吐くまで酒を呑ます吐いても酒を呑まし続ける。
 次酒に呑まれたら制限を掛けるのも吝かじゃあねぇな。酒に酔えない制限、とかな?


 流石に一時間の説教にトルドレスを付き合わせる訳にはいかないから、説教を始める前に授業に戻らせた。俺からの忠告を一つだけ添えて。

『なぁ、トルドレス。お前の出場は決まってる訳だがまだ大会まで日はある。て事でさっきの詫び代わりとしてヒントを一つ。とは言ってももう既に充分勝ち抜けるとは思うが、これはお前の伸び代に関係している』


『即ち———“魔素とは何ぞや?”』


 “魔素”と言うのは、何処にでもあるにも関わらず素の目では見ることの出来ない魔法の素となる物。これは授業でも習う事だ。
 しかし何事も奥は深いもので、魔素にも色々あるのだ。
 授業では魔素に関しては深く追求せず、それをどう扱うかを主に教えられている。


 この言葉を聞いてトルドレスは頭を傾げていたが、此処で考えてもしょうがないと思ったのか、最後に頭を下げて教室に戻っていった。
 ヒントに対してアイツはどんな解答を見つけるのか、楽しみが一つ増えたな。
 しかし、それはそうと。


「アイツ大丈夫か?結局昼飯食ってなかったしな、ダメな大人の所為でよ。なぁ?」
「・・・・・・そうじゃ————そうですね!まだ5分ありますので届けて来ます!」


 俺に何を見たのかは知らないが、急に敬語になった学園長は部屋から飛び出して行った。
 これで安心して俺も食える。
 俺は適当に先ほど座っていたソファーに再度腰を掛け、来る前に購買で買っておいたパンを手に取って無造作に袋を開いて頬張った。


 にしてもクァルプギス、ね。あ、そう言えば。


「おい、クソ天。お前等は酒の場で誰に話した?」
「仮にも国王に対してクソって・・・・・・・・・」
「当たり前ね。忉利の秘密は国家機密どころか神話級に、誰に話しても普通は信じてもらえない話しじゃないの。でも、大国の王とその王と肩を並べる者が話せばどんな事も説得力が増すと言うものよ。それを易々と外部に漏らしたのだから、自分の立場が理解出来てないんじゃないの?」


 自分の夫に対して冷めてゴミを見るような目で見て辛辣に突き放すプリトゥ教諭。完全に味方がいなくなったな。
 しかしプリトゥの言う通り、俺の事は口を漏らしてもらっては困る。
 そこに関しては詳しく話を聞く必要があるな。本当に此奴は面倒事増やすんじゃねぇよ・・・・・・。
 釈天は腕を組んで呑んでいた時の記憶を必死に呼び起そうとしている。


「確かあの場に居たのは〜・・・・・・。俺とシロ、ヴァルナの野郎。後はローグが居たぞ。それにアンリ・マンユも居たな」
「成る程、死ね愚王」
「殺しましょ、手伝うわ」


 アンリも一緒だった理由は後程本人に聞くとして、選りに選って他国の王にも漏らしてやがるわこの阿呆。


 ————ヴァルナム=シーレイン。


 極東に位置する箱庭とは対極の位置に存在する国、“海上国島・シーフィール”を束ねる国王だ。
 シーフィールは海の底に根付かない島であり、島そのものが生きているのかように島そのものが流れている大国。


 ローグと言うのはただの流浪人だからそこは気にする必要は無い。
 にしても、我が国の王は無用心が過ぎると言うものだ。クァルプギスで必死になっている割には危機感が成ってないだろ。


「だがまぁ、アンリが居たなら大丈夫だな」


 彼奴も事情を理解している者の内の一人だ。寧ろ当事者の内の一人とも言えるからな。如何にかしてくれてるだろ。


「もうこれ以上気付く事が無いように俺は退散するわ。話も聞いたし、面倒事は今日は終了だ」
「ええ、構わないわ。学園長には私から言っておくわ」
「んじゃ頼んだわ。失礼しましたー」


 必要な事も聞いたし、余興も増えたんだ。もうこれ以上は面倒したくねえな。
 とか思ってたんだけど。


「・・・・・・・・・逃げよ」


 扉の向こうに厄介ごとの気配がした。
 色々しなきゃいけねぇ事があんだから勘弁してくれ・・・・・・。
 つう事で身体を180度回転させ、窓から飛び降りた。いや、正しくは降りてないから“跳んだ”だな。


「アイツも色々大変だな」
「貴方もその原因の一つよ」


 後ろから阿呆が阿呆見てる会話が聞こえるが、全くだ。


「はぁ・・・・・・しんどい」





———————————————————————————————————————————————————————————————




 結局学校では面倒事はこれ以上起きなかった。
 跳んだ後も少し遠回りして自分の教室に戻り、午後の授業の間は寝て過ごした。
 これで寝ている事に対して何も言われないのだから、大人組も諦めているんだろうな。まぁちゃんと点数は取ってるんだから文句なんてあるはずもないか。


 俺が目を覚ましたのは授業後のSHRが終わってからだった。
 時計の針が指すのは19時。残っている生徒は殆ど居ないであろう時間帯だ。
 目を覚ます為に身体を伸ばして意識をハッキリさせる。
 そして、何故か存在する一つ前の席にある丸まった背中の人影を頬杖を着いて眺める。
 その人影は気持ち良さそうに寝息を立てている。


「今日初めて会ったのに意識の無いコイツばかり見てる気がするな」


 念の為言っておくが俺とトルドレスは今日が初対面だ。
 前から名前や顔は互いに知って居たかもしれない。互いにある意味では有名だしな。いや、俺の場合は名前の独り歩きで顔を知っている人は身近な奴らだけだな。
 少なくとも俺らは言葉を交わすのは初めてだ。
 警戒心薄すくねぇか?
 当の本人は寒いのか身を震わして起きる気配が無い。


 そう言えば昼間の時、学園長室前に居た奴らはどうしたんだ?
 てか廊下が騒がしいな。


 あ。


「空亡はまだ居るかい?」


 教室の扉が勢い良く音を立てて開けられた。
 そして偉そうな3人組が俺の目の前に来た。
 結構な音がしたがこの後輩、この状況で・・・・・・。


「五月蝿ぇよ阿呆ども。第三席様休んでるんだぞ。気ぃ使えや」
「阿呆だと?貴様、誰に向かって口を聞いているか分かって言っているのかい?アロガンス伯爵家のラムルス=レルト・アロガンスだとわかって言っているんだろな。本来ならアロガンスの名の下に罰してやるのだが、しかし、まぁ今回は見逃してやろう」


 んだよ見逃すのかよ。
 挑発してんだから乗れや、とは言わない。
 正直、どんな罰が下るのかは気になるが、残念なことに今はそんな気分じゃない。阿呆な大人のせいで疲れているからな。
 因みに此奴等は隣のクラスの生徒であり、2ー3の生徒の中では優秀な方らしい。
 俺は話の先を促した。


「そすか。んで、何で来たの?」
「私の用件の内容が優先だよ。貴様は今年のクァルプギスに出場するんだそうだな」
「ハァ・・・・・・まぁ、お耳が早い事で。んでだとしたら何だ、貴族様?」
「その役割、俺に変われ」


 あ、トルドレスに関しては無視ですか。
 因みに此奴等が昼間の俺が逃げた厄介ごとだ。
 な?面倒そうだろ?
 プライドの高い奴ってのは何でこうも面倒臭いんだかな。
 しかもまだクァルプギスについては引き受けてないんだがな。大会はまだまだ先だし。
 にしても此奴が出ても良くて一回戦敗退だろうな。要するに雑魚に当たる実力くらいだと思うんだが、どうなんかね。


「あー、良いぜ」
「・・・・・・・・・結構アッサリだな貴様。本当に良いのか?」
「おい、高いプライドどうしたよ。そこは“ハハハ!私に恐れをなしたな、貴様のような低俗な庶民はそれが当たり前だったな。だが素直に譲ったのは評価してやろう”、みたいな台詞だろうが」
「え、私って周りから見るとそんなにプライド高そうなのか?」


 取り巻きの二人が何度も頭を縦に振っている。
 それを見て地味にショックを受けているラムルス様。え、思ったよりも貧弱だな。
 にしても自分からクァルプギスに出たいだなんて、やっぱ阿呆じゃねぇか?
 貴族程度が王族の圧力に耐えられるかっつの。
 まぁどうでも良いから譲るけど。


「なぁ、空亡。なんでそんなアッサリと?」
「何弱ってんだよ」


 此奴、腹黒そうな優男っぽい顔してるのに不安そうな顔してると本当に傲慢で名が通ってる伯爵家の人間とはとは思えないな。
 ちょっとだけ面白い。


「まぁ俺は最初から出場には乗り気じゃねぇんだよ。あんなの只のちょっとデカイ喧嘩だろ。やってられっかよ面倒臭い」
「えぇ・・・・・・・・・喧嘩って。結構光栄な事だと思うんだがな。学生の出れる大会で最大の栄誉だろ?」


 丁度良い機会だな。


「おい、ラムルス。クァルプギスが最初はワルプルギスだったのは知ってるか?」
「突然だね。しかも、え、宴会だったの?」


 此奴キャラ変わりすぎじゃね?
 なんかナチュラルに俺の隣に座ってるし。取り巻きもその後ろで座ってんじゃねぇよ。


「まぁ、そうだな。神霊二人でちょっと飲み食いするだけのただの宴会、いや飲み会だな。・・・・・・・・・なんか唐突に説明するのが面倒になって来た」
「え!?貴様が勝手に話し始めたのに!?いやまだ序盤の序盤じゃないか!簡略化して良いから聞かせてくれよ!」


 男に懇願されてもやる気起きねぇけど、簡略化して良いなら話すか。
 話し始めたの俺だし。


「分かったから近ずいてくんじゃねぇ」
「あ、ごめん」


 素直に謝って身を引く。
 そして続きを促すような目で見てくる。
 最初の傲慢そうな優男をだせやゴラァ!


「まぁ飲み会だった訳よ。そしてその宴会の企画者は神霊の類の悪神で、今はクァルプギスの象徴の人物の片割れだな。其奴は争いが話し合いで済めばとか甘ったるい事言ってる奴だった。その時の時代はまだ戦争でドンパチしてたからな。どんな時でも世界の何処かでは戦争が起こっていた」


 此処から簡単な簡略化回想な。




——————————————————————————————





 彼女は悪神の身で、人間がいつか滅びてしまうと、涙を流すような存在だった。
 しかし、いつ滅ぶのか。と言うのは生きる全ての意思の裁量次第では幾らでも伸ばす事が出来る。
 そこでどうにか出来ないかと考えた悪神は善神に相談し、全ての国王を力ずくで招集して宴会を開いた。


 ツッコミどころ満載なのは言うまでも無いな。


 まぁ、その宴会で二人の神は全ての国王の意思、意見を問うた。
 ある国は、食料確保の為。
 ある国は、力の見せつけの為。
 ある国は、神のお伝えの為、とかほざいてた。阿呆らしい。
 全て聞いた上で善神と悪神は試行錯誤し、善神は一つの結論を出した。
 晴れやかな笑顔で全ての国王に告げた。


「あ〜もう面倒くせぇです。年に一度全国家間での格闘大会を開きます。主催は私とアンリ。勝手に戦争をした国は塵も残さずに滅ぼしまーす。詳細は追ってお伝えしますんで解散!バイバーイ♪」


 こうしてクァルプギスは開かれる事になった。















「以上。あ、やっぱ出場遠慮していい?、とか言ったら学園長に言って単位落とさせるから」





         「「「酷い!」」」










———————————————————————————————————あとがき—————————————————————


いやー、今回は地味に長かった気がするよ。
本当の意味で一月掛けて考えたからねぇ。
一月掛けて書いた訳ではないんで誤解無きよう。

『お疲れ様です。流石作者様ですね』

ありがとうねぇアリスちゃん。
忉利と違って優し———————

『次は今回の倍で行きましょう♪』

・・・・・・・・・・・・うーん、このパターンねハイハイ。
にしても最後の方は少しテキトーに見えるかもしれないですね。
それ、事実です。
正直一月掛けて考えても良い案が浮かぶかは別で、結局5月末に何とか考えに考えて急いで書いてるのでテキトーです。1/6くらは。

『全く。しっかりして下さいよ?じゃないとこのアカウント消すはめになりますよ?』

それは本当に勘弁なので頑張ります!
アカウント削除は冗談です。すいません。


えー、話は変わるのですが、今月だったかな?
アップデートでお気に入り数とか見れるようになってたけど、4とか5を想像してました(全部友人パターン)。
ですが、その数十倍以上にお気に入りされてて感激でした!
モチベーションガン上がりです!
読んでくれている皆様、ありがとう御座います!

そしてもう一つ。
前回コメントをしてくれたお方。
こう言う時に名前出して良いのか分からないから伏せますが、ご指摘ありがとう御座います。
一応直したつもりではあるのですが、直っていなかったらお手数ですがもう一度指摘して頂きたい。
直っててもコメントは大歓迎。

『待ってますね♪』

通知もONにしたので、お気に入り登録、GOOD、コメントなどは此方に届きますので是非是非!

それとコメントに関しては来ていたら次の最新話のあとがきで返信、と言うのをしたいなと思っていますが、良ければご意見ください。
まぁコメント来ればですが。

「来ねぇよ」

居たのかよ。
最後の最後なのに・・・。

えー、あとがきが長くなってしまいましたね。申し訳ない。
まぁ、という事で、第五話を読んでいただきありがとう御座いました。

次回も頑張るので、指摘や駄目出しなど。
良ければ応援コメントもお待ちしています!

それでは、
「『またお会いしましょう』」
おい!!



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